■ストーリー展開■
とにかく、テーマがハッキリして展開が決まらないことには書けないのです。ということに気付いたのです。(遅ッ)
書きたいシーンはたくさん話してきたけど、どう展開してどう解決するのか。…3Pは忘れて下さい。お願いします。(笑)
決めたことといえば、5回連載10ページ前後、結果三つ巴のまま、炯ちゃんアイドル。そしてアダルティ。ということだけなんだよな…ざっと書いてみるので、提案や修正があったらメールで連絡下さい〜。
ちなみに第一回がどこまで、とかいうのはまだ決めていません。展開の羅列。最初は決めて書いてたんだけど、君の〜の経験上、意外と10ページって長いよね。ということを思い出した。
【概略】
高沢旭希はずっと、二階堂炯を愛している。不毛な感情は不毛なまま、自分の中に納まってしまっていた。結婚し、子供が出来て、事情があり離婚した炯。彼が同性である自分などに振り返ってくれるはずもなく、かといって自分の気持ちが消えることもない。どうしようもないまま時間だけが流れていく。
ある日、旭希は奇跡のような一夜を手に入れた。疲れきった炯が、自分の腕の中に落ちてきたのだ。喜悦に狂って、炯が初めてではないことも気にならなかった。自分に伸ばされる白い腕。どうしようもないくらいに興奮し、ざわめく旭希を眠りについているはずの炯が呼んだ。「タカヤ」と。愕然とする旭希は、最悪の形でタカヤという名の存在を知る。
タカヤの正体を知るにつけ、旭希の不安は大きくなる。このままでは炯が不幸になるだけだと胸を痛め、自分だけのものにしてしまいたい欲求を勘違いした。守ってやりたいのは、エゴ以外のなにものでもないというのに。
差し伸べる旭希の手に、炯は混乱する。そうじゃないんだ、という言葉は言えないまま、炯は逃げることも拒むことも出来ず、また旭希の独占欲を受け入れることも出来ない。不安に困惑する炯を支えてくれるのは、どうしてなのかいつも鷹谷で。
いつの間にか、炯にとって鷹谷と旭希の立場が入れ替わる。炯を不安にさせる旭希と、慰めてくれる鷹谷。どちらも切り捨てられないと弱気に呟く炯に、自分を選べと叫ぶ旭希。反対に、鷹谷は今の状態を受け入れるという。そうして、炯を潰してしまいたいなら思うようにすればいいと旭希に囁くのだ。仕方なく、旭希も現状を受け入れることに。
@旭希んち。
旭希は喜悦に震える手を握り締めていた。
抱いた。抱いたのだ。ずっと愛し続け、想い続けていた人を。絶対に手に入りはしないのだと諦め、人のいい友人の仮面をかぶり続けいていたのに。
中学生で会った時からは、よりシャープになった炯のきれいな横顔。髪を撫でてやりながら、冷めない興奮に気持ちを昂ぶらせる。
何度も手を伸ばし、そんなはずはないと引き戻していた。
炯が結婚して諦め、子供が生まれたときに諦めなおしている自分が、少しも諦めていないのだと知ったときは半ば自分に呆れたほどだ。
仕事に疲れて離婚してからの炯は、なにかから逃げるように旭希の元を訪れるようになった。そうして彼の中に、自分という存在が大きくなって、女などでは換えられないほどになっていくのを喜んだ。
思うような結果などなくてもいい。炯が、幸せに生きていくために出来ることならなんでもしてやりたかった。甘えたかったら、甘えればいいと思って。泣きたいなら、泣いてしまえばいい。この場所だけは絶対に譲らないと決めて。
無防備に投げ出される身体を自分の欲で汚してしまうより、永遠に隣で寄りかかってもらえる存在であることを選んだのに。
夜遅く、迎えに来て欲しいと連絡してきた炯は、正体をなくすほど飲んでいた。抱え上げて家に運び、ベッドへ寝かせてやった旭希の手を離さなかった。淋しい、欲しいと訴える濡れた声に、抗えたのは最初だけだ。唇に触れたら、もう止まらなかった。
慣れた仕草で自分に縋る炯が、初めてではないことなどすぐにわかったけど。自分ほど炯の近くにいる男はいないはずだから。いま、炯が選んだのは自分だ。欲しがるのは旭希という人物だ。そのことに、酔いしれた。
寝返りを打った炯の肩を抱き、唇を触れ合わせる。炯、と優しく名前を呼んだ旭希に、まだ夢の中にいる炯は「タカヤさん」と誰かの名を呼んだ。驚愕に凍りつく。誰の名前かわからない。咄嗟に身を引けば、炯は自分から手を伸ばした。
「今日だけは甘やかしてくれるって、言ったじゃないですか…タカヤさん?」
聞きなれた、甘える声。ぱたりとシーツに落ちた手から、旭希は後退った。身体を支配していた陶酔が、急速に冷めていく。唐突に鳴った携帯に、現実を突きつけられて振り返った。炯が起きてしまうのが恐ろしくて、携帯を探す。見つけたのは、炯の携帯だった。もう一度鳴った。音を消してしまいたくて、咄嗟に開いた携帯。
――着信2件:メール:差出人:Takaya
こんなことは、友人どころか家族でも犯罪だ。そう思うのに、旭希はメールを開いた。
最初のメールは言葉だけ。
――いい加減、落ちついたか。淋しかったら使え。
件名もなく、それだけ。
もう一つのメールは、本文もなく添付ファイルが送りつけられているだけだった。携帯のカメラで取られたのだろう画像。見た瞬間、旭希は自分の身体が冷たくなっているのを感じた。携帯の小さな画面で、炯は頬を染めていた。苦しげに眉を寄せ、それでもどこか酔っているようなたまらなく艶めかしい表情で、知らない男のものを咥えている。
A旭希んち。
目を覚ました炯は、いつもの甘い香りがしないことに気付いて首を傾げた。こうしてだるい身体を引きずり目を覚ますとき、必ずそこにあるのは甘ったるい香り。いつも先に目覚めたタカヤが、炯の嫌いなブラックルシアンを燻らせているはずなのに。
痛みに眉を寄せながら身体を起こせば、そこはいつもの柔らかいベッドではなかった。タカヤのマンションも、タカヤが使うホテルの部屋も、ベッドはシモンズ。こんな、大きいだけが取り柄みたいなベッドじゃないはずなのに。
「あれ……?」
首を傾げてあたりを見回す炯は、そこにいた人物にぎょっとして目を見開いた。不機嫌そうに自分を見下ろしているのは、一番大切な友人だ。
どこだかわかるか?と、彼は冷たい声で聞いた。答えられない炯が俯いて毛布を引き寄せると、携帯を投げつけられる。
メールが来ていたと怒ったようにいうから、開いてみた。タカヤのアドレスから発信されていたメールには、自分のあられもない姿が貼付されていて。ばちん、と勢いよく携帯を閉じた炯は、恐る恐る顔を上げる。腕を組み、仁王立ちで自分を見下ろす旭希に全てを知られたのだと、肩を落とした。
淡々と昨日のことを語られて、返事に窮する炯は悪かった、旭希だとは思わなかったんだと言い訳をする。その言葉にキレて、旭希が詰め寄ってきた。
タカヤとは、誰なのかと。お前は何をしているんだと。
しどろもどろに、炯は離婚した直後から続くタカヤとの関係を話した。止めようとは思っている。でも、続いてしまっている関係。迷惑はかけないようにする、と謝る炯の唇をいきなり旭希が塞いだ。ずっと親友だと信じていた男の行動に、炯の思考がついていかない。
なに?どういうこと?
ずっと好きだったという旭希の告白に、炯は混乱する。怒りで欲情する旭希に押し倒され、恐ろしくなって突き飛ばした。慌てて服をかき集め、身に付けて飛び出していく炯を、旭希は追いかけない。
B鷹谷さんち。
ようやく仕事を終えて部屋に帰ってきた鷹谷は、勝手に上がりこみ、勝手に落ち込んで、勝手に項垂れている炯を見つけた。ふいに口元に浮かんだ笑みを消し、近づくと首筋に赤い痕。
困ったような顔で鷹谷を見上げる炯のメガネを取り上げ、見つけた跡に唇を押し付けた。
「昨日は楽しんだようだな」
言ってやれば、驚いた顔をした炯は、隠し事できませんねと溜息をついた。
僕なんか抱いて、楽しいですか?と唐突な質問に、鷹谷は余裕の笑みでネクタイを解く。何があったんだと問われた炯は、どうせ隠していてもバレるんだと旭希のことを話した。僕なんかのどこがいいんだか、と本気で思っているらしい炯は、クリエイターとしての観察眼は素晴しく鋭いのに、自分のことについては驚くほど鈍感だ。
隣に座って唇を塞いで。深く口づけながらも「どうだろうな?」などと意地悪なことを言う鷹谷に、炯は貴方はいいんですよ。と拗ねている。「どうせ遊んでるだけでしょうが」と。
いつまでも自分の魅力を理解しようとしない炯から離れ、鷹谷は携帯を出せと命じた。おとなしく携帯を差し出す炯から携帯を受け取り、鷹谷は旭希に繋ぐ。繋がったのに何も言わない旭希に、「お久しぶりですね、旭希さん」と話しかけた。驚いたのは、目の前の炯と、電話の向こうの旭希。
「鷹谷ですよ、わかりませんか?貴方は昨日、私の名を聞いたはずだ。事情が知りたければここへ来なさい」
自分の居場所は秘書に聞けばいいと言って切った携帯を炯に返せば、彼はまだ驚いた表情で鷹谷を見ていた。
C鷹谷さんち。
駆けつけた旭希は、秘書に中へ通される。リビングに入ると、炯が慌てたように服をかきあわせていた。
何のつもりなんだと怒り心頭の旭希。鷹谷は、高校時代に旭希から聞かされていた二階堂炯という存在を覚えていたこと、その時に旭希の友人ということで炯のことを調べたことを話す。数年後、ボロボロに疲れている炯を見つけたときにすぐ、かつて自分が調べさせた二階堂炯だと気付いた。いまにも倒れそうな炯に興味を引かれて、声をかけたのだ。
旭希は炯を守るように鷹谷と対峙する。お前は自分にしたように炯を裏切り、傷つけるんだろうと決め付け、責める旭希に鷹谷は反論しようとしない。もちろん、肯定も。
守られていながら、炯は違和感に気付いていた。まるで旭希は、全てを見通しているようにいうけど。確かに旭希は、炯のことをよく知っているけど。鷹谷にとって自分が遊び相手だということは間違いじゃないと思う。でも。
鷹谷が自分を傷つけ、裏切るということがどうにも信じられない。なぜなら、炯にとっても鷹谷が救いになっているのは事実なのだ。炯からも、鷹谷を求めることがある。
二度と炯に近づくなと言い捨てて、旭希は炯の腕を掴み鷹谷の家を出た。引きずられながら振り返った炯は、苦笑いを浮かべて自分を見送る鷹谷に、少しだけ安堵する。安堵の正体が旭希に対する不安なのだと知って、ちょっと苦しくなった。
D稽古場。
最近、炯はほとほと困っている。
あれから鷹谷には会っていない。旭希が会うことを許さないし、当の旭希はまるで保護者のように炯の行動を管理している。
生活が一変していた。旭希の作る健康的な食事を食べて、旭希の片付けてくれる部屋で仕事をして、旭希の用意してくれる服を着て。壊れ物のように大切に大切に扱われるセックスで眠りにつく。
贅沢だとはわかっているが、炯は今の生活に満たされない。
顕著に現れたのは、仕事だ。書いても書いても、納得できなくて台本が仕上がらない。劇団員にも「珍しい」と言われるくらいだ。いつもなら稽古に入るときに仕上がっているはずの台本。スポンサーも焦れている。
何が不満だと言われたって、答えられない。なにも不都合がないのが不満だというところか。
打ち合わせにも身の入らない炯を気遣って、周囲は一度帰って休んだ方がいいと言ってくれた。旭希の待つ家に帰るのが恐くて「大丈夫」と答えていたが、自分がいても迷惑なだけだと気付いて炯は腰を上げた。
そんなに嫌なら、旭希の家に帰らなければいい。でも心配そうに電話をかけられると、拒絶するだけの理由がなくて炯は結局旭希の元に帰るのだ。
稽古場を出たところで、炯は足を止めた。見慣れたマクラーレン。吸い寄せられるように近づいて、乗り込んだ。運転席の鷹谷は何も言わない。車を出した鷹谷は、途中人通りのないところに車を止めて、深く口づけた。威圧的なキスに酔う炯は、呆然とする。
終わらせたかったはずだ。鷹谷との関係は清算しなければならないと、旭希にバレる前から考えていたはずなのに。
旭希の家まで送って欲しいか、と鷹谷が意地悪く問いかける。送ればいいでしょうといつものように反論しかけた炯は、結局首を振った。辛そうな表情の炯にやっぱり何も言わず、鷹谷は車を走らせる。
E温泉旅館。
どこまで行くんですか、と問いかけるのが恐かったのは、じゃあ帰るかと言われたくないからだ。だまって助手席に座っている炯の髪を、珍しく優しい仕草で撫でた鷹谷は、もう少しかかるから寝ていろと言う。
目を閉じた炯は、最近の自分の眠りがどれほど浅かったかを知った。
すぐ眠りに落ちて、肩を揺すられるまで。時計を見れば一時間以上立っていたのに、炯にはほんの数分に感じられた。
車を降りたのは、東京から遠く離れた緑の多い場所。色調を抑えていてもなお豪華な旅館に待っていたのは、柔らかな笑みを浮かべた女将一人だった。
何事ですかと驚く炯に、鷹谷は最近自分が忙しかったので、温泉に入りたかったのだという。付き合え、と引っ張られてその大きな旅館に足を踏み入れた。
部屋は和室を邪魔しないベッドルームと、広い和室。窓からは渓流が見える。窓辺に寄った炯は、そこにしつらえてある個室専用というには大きい露天風呂に溜息をついた。世の中こんな贅沢な旅館があるんだなあと、軽く感動してしまう。
気に入ったか?と聞く鷹谷の声がすぐそばで聞こえた。少し身体を傾けるだけで、鷹谷の身体に寄りかかることが出来る。はたりと静かな音で襖が閉められたのに気付いて、二人ではなかったと慌てて離れる炯に、鷹谷はおかしそうに笑う。女将はすでに姿を消していた。
ここへ来たのは、炯の為なのだと。さすがに自分のことは鈍感な炯も気付いていた。甘やかしてくれるんですかと悪戯っぽく問えば、甘えたいならな、と珍しい答えが返ってきて。素直にしがみついた。
広い湯に浸かって、用意された豪華な料理に舌鼓を打つ。量で勝負というような、派手な演出はない。しかしどれも、気がきいていて美味しかった。鷹谷は趣味がいい。いつも使うホテルだって、彼自身の部屋だって、シンプルでいて居心地のいい場所をよく知っている。
しかし、甘やかしてくれたのは美味しい酒と料理を堪能したところまで。ベッドに引き込まれ、浴衣の帯で両手を拘束されて激しく突き上げてくる快楽に、それでも炯は酔っていた。なにもかも引きずりまわされるような傲慢なやり方に、心が軽くなる。
朝、目覚めるなりパソコンを取り出し打ち始めた炯を、鷹谷は放っておいてくれる。あんなに仕上がらなかった台本を三日で仕上げて、二人は東京に帰って行った。
F稽古場。
旅館から稽古場に直行したいと言い出した炯を、鷹谷は黙って送ってくれた。
仕上がった台本に、いちからやり直しじゃないか悲鳴を上げつつも、周囲は感嘆を隠せない。さすが二階堂炯。賞賛を、当然のような顔で炯が受けている。
夜、稽古場に顔を出した旭希は、憑き物が落ちたような顔で指示を出している炯に驚いた。入り口に立っている旭希の存在にも気付かないのだ。腕を引かれ、旭希はぎょっとする。そんなところにいるはずがない男。稽古場の外に連れ出され、どういうことだと詰め寄れば、鷹谷は受け入れろ、と厳しく言い放った。
炯は、籠の鳥になることなど望まない。
彼を愛しているなら、炯を受け入れろと。彼には旭希という光も、鷹谷という闇も、どちらも必要なのだ。詭弁だと反論する旭希は、炯の気配に振り返った。炯の方もまさか二人がいるとは思わなかったのか、立ち竦む。
おろおろと視線をさまよわせる炯に、鷹谷はどうするんだと聞いた。どっちと帰るんだ?……今日は。なんて。
苦笑いを浮かべる炯は、旭希の腕を掴んで「こっち」と悪戯っぽく笑った。な?と無邪気に旭希を見上げて笑うから。忌々しそうに鷹谷を見て、旭希は「わかった」と呟いた。まるで納得していない旭希の顔に、二人が笑う。