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[Novel:01] -P:08-


 何も言わずに聞いてくれる宏之も大好きだが、こうやってテンポよく会話を拾ってもらうのも楽しい。
 晃は少しだけ暗い気持ちを消せたような気がして、どうでもいいような会話を続けながら、手を引いて歩く二階堂の後ろをついて歩いた。
「なあ、いい加減手ぇ離せってば」
「ヤだ。今度逃げられたらもう追いかける自信がない」
「だから〜。逃げないって」
「わかんないでしょ〜が。宏之くんには嘘つかないみたいだけど、チビちゃん僕には平気で嘘つくからねえ」
「いつオレがあんたに嘘ついたって?」
「こないだだってさ、舞台見においでって言ったら『行かねえ』とかかわいくないコト言ったくせに、来たんでしょ。知ってるよ」
「あれはぁ…つか、人のことネタにしやがって」
「いいじゃない。宏之くんの役を宏之くんにさせなかっただけでも褒めて欲しいなあ」
 コンビニで恋人と出会った主人公は、なんでか銀行強盗に巻き込まれ、どういういきさつだったか愛に目覚め、最後の方で濃厚なキスを展開したあげく、逃げ切った強盗犯と親友になって終わった。
 バカバカしいストーリーなのに、幕が下りるまで観客はみんな舞台に釘付けだった。実は晃もその一人。
 こんなチャラい男の手のひらの上で、ころころ転がされていたのかと思うと、むうっと拗ねたくなるのも仕方ない話だ。
「って、ドコ行くんだよ」
「ん〜どこ行こうか。じゃあ、ファミレス?」
 と、目の前の店を指差している。
 ちらりと二階堂のうさんくさい笑顔を見上げた。
「オゴリ?」
「まあね」
「おし。奢られてやる」
 意気揚々と入っていく晃に「手加減して下さい」とちょっとだけ後悔しつつ、二階堂が続いた。


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