バロン(及びランダ)の詳細について、色んなサイトからピックアップしました。
をクリックするとここへ戻ります。
■Wikipedia
■APA?
■Dictionary of Pandaemonium
■Interest noiz内、悪魔辞典
■インドネシア専科内、神話の系譜
■Wikipedia
バロン (聖獣)
バロン(Barong)は、インドネシアのバリ島に伝わる獅子の姿の聖獣。別名バナスパティ・ラジャ(森の王)。
伝説
森の「バナス・パティ」(良気)の顕現であり、バリ・ヒンドゥーの善の側面を象徴しており、反対に悪の象徴である魔女ランダと対を成す。たとえ倒されても必ず復活しランダと永劫の戦いを続けるとされる。ここから、バロンはあらゆる災害を防ぐ力をもつと信じられており、デサ(村)の寺院の一隅に収められ、日々、供物と祈りの対象となっている。全身に輝く鏡の小片をつけた獅子の姿で表されるのが普通である。
ランダ(魔女)
ランダ(Rangda)は、インドネシアのバリ島に伝わる魔女。
ランダの語義
ランダは、本来は「寡婦」を意味する。
ヒンドゥーのサティーと呼ばれる慣習では、夫に先立たれた妻は、夫に従って死ぬのが理想とされる。バリ・ヒンドゥーでも19世紀までこの慣習が続けられていた。しかし、実際には、現世への思いが深く墓場にさまようケースも生まれる。そんな寡婦は、時として子どもを食べる羅刹の類であって、転じてバリでは、あらゆる恐ろしげな存在に対してランダの語が用いられることになった。
ランダとバロン
ランダはバリ・ヒンドゥーの悪の側面を象徴しており、反対に善を象徴する神獣バロンと対を成す。たとえ倒されても必ず生まれ変わり、バロンと終わりの無い戦いを続けるとされている。
また、シヴァの妻であり、シヴァの破壊的な面を表わすドゥルガーの化身でもある。
舌を出し、浮き上がったあばら骨に萎びて垂れた乳房を持つ老婆である。ランダの像には、子に乳を与える姿と子を食いちぎる姿が見られる。
ランダは基本的には人間に災いをもたらす魔術しか使えない。しかし、誰かの温かい心に触れて良心に目覚めることが出来れば、人間を治癒する魔術をも行使できるようになるとされる。
レヤック(Leyak)やチュルルック(Thurulck)などの使い魔達を従えているとされる。
■APA? →サイトへ
バロン(barong)
バロンは、バリ人にとって宗教的かつ神聖なもの。人間の叡智をもってしても解決できない問題が起こった時、彼らはバロンをよりどころとする。
バロンは神と同一視され、ご神体(ススォナン)として扱われている。ご神体(ススォナン)のバロンは「ラトゥ・サクティ=Ratu Sakti」「ラトゥ・グデ=Ratu Gede」とバリ人は呼ぶ。
ほとんどのバロンは、動物の面(木彫り)に胴体がついたもので、魔術的な力が宿っていると信じられている。中には、ススォナンとしてではなく、ツーリスト向けの公演でのみ使われる面もある。これらの面も、毎日の供物は欠かさない。
ススォナンとなったバロンは、普段はダラム寺院の祠に保管されていて、オダラン(寺院祭礼)の時に祠の扉が開かれ、祠の前に村人の平和を見守るかのように安置される。そして、奉納の舞いや祖霊を迎えるガルンガンの祭りで辻々を巡って除霊する時にも、祠から出されるのだ。バロンが祠から降ろされたら、そばにいる人々はすみやかにその場に坐るなどして、低い姿勢にならなければならない。人間はバロンより高い位置にいてはいけないのだ。
奉納舞踊やこうした儀式でのバロンの踊りは、バロン・ダンスとは言わず、バパン(bapang)・バロンと呼ばれている。そして踊り手は、ジュル(juru)・バパンと呼ばれる。
バロンの起源は仏教の伝来と密接な関係があり、中国や日本の獅子舞にも影響していると思われる。
いつの時代に、バリに登場したかは明らかではないようだ。
※バリで発展したバロンの種類には、次のようなものがあげられる。
○バロン・ケケッ(Barong KetKet、Barong Ket、Barong Rentet、Barong Ketetとも呼ばれる。獅子、虎、牛などの魔力を持つ動物が混じった形を表した森の王者)
○バロン・マチャン(Barong macan・虎。神秘的な動物)
○バロン・バンカル(Barong Bangkal・年老いた猪。魔力を持つ神秘的な動物)
○バロン・ガジャ(Barong gajah・象。聖なる伝説上の動物)
○バロン・ルンブー(Barong Lembu・雄牛)
○バロン・シンガ(Barong Singa・ライオン)
○バロン・ムンジャガン(Barong Munjangan・鹿)
○バロン・カンビン(Barong Kambing・羊)
○バロン・アス(Barong Asu・犬)
以上のようにさまざまな種類があり、胴体の部分に2人の演者が入って獅子舞いのように舞う。
●バロン・ケケッ(Barong Ketket)
バロン・ケケッは空想上の聖獣とされているが、伝説によると、聖者ムプ・パラダの化身とも、森の王者「バナスパティ・ラジャ」とも言われている。
この聖獣バロンは、善、聖、清、太陽、病を治すものの象徴であり、悪、魔、穢れ、暗闇、死を象徴する魔女ランダに対抗する魔力を持っていると信じられている。
長い顎ヒゲには人間の黒髪が使われ、もっとも神聖な部分だと言われている。ヒゲには可憐な白いジュプンの花が結えられる。
●バロン・ランドゥン(Barong Landung)
ランドゥンとは、背の高いことを表すバリ語だ。直訳すれば背高のっぽのバロンというわけだ。
バロン・ランドゥンは2人のキャラクターからなる。
ジェロ・グデ(JERO GDE)と呼ばれる男性と、ジェロ・ルー(JERO LUH)と呼ばれる女性のペアーだ。どちらも伝説の人物である。
ジェロは低い階層の人が高い地位に移動した時に呼ばれる名称で、グデは王族の人を表し、ルーは女性の名称だ。
いくつかの起源伝説がある。
ひとつは、ジェロ・グデ・マチャリンの話だ。
昔々、バリ島南部にある不毛の小島ペニダ島に邪悪な巨人なジェロ・グデ・マチャリンが棲んでいた。
ペニダ島に近い南部の海岸の人々は、ジェロ・グデ・マチャリンの侵略を恐れていた。人々は、ジェロ・グデ・マチャリンに似た身の毛もよだつ巨大な悪魔の人形を作り、ジェロ・グデ・マチャリンを脅かすことを考えた。ペニダ島やペニダ島に近いバリ南部にいくつかのお面が見つかっている。
もうひとつの伝説はこうだ。
バトゥール山の北側の外輪山にあるバリンカンの森に、ジャヤパング(Jayapangus)王国があった。王は中国人女性を嫁にすることを望み妻とした。王子がなくなった時、民衆はバロン・ランドゥンを作った。この時、女性のバロン・ランドゥンが中国人になったと言われる。
これ以外にも諸説あるが、どれも明確なものではない。
●バロン・ブルトゥッ(Barong Burutuk)
このバロンは、バリ島中央部バトゥール山のカルデラ湖畔にあるトルニャン村にしか見られない。トルニャン村は、バリがヒンドゥー教化される以前からの宗教を守り、独特の風習を強く保持している。これらの村は、バリ・アガと呼ばれている。火葬式が常識のバリにあってトルニャン村は唯一、風葬の村だ。
何体ものバロン・ブルトゥッがムチを手に、村を徘徊し子供たちを追っかけ回す。悪霊払いの意味があり、秋田のなまはげを連想させる。クライマックスは、男性のブルトゥッと女性のブルトゥッが出逢う場面である。この奉納には、繁栄の願いが込められているという。
聖獣バロンと魔女ランダ
バリ社会では、男/女という、ジェンダーの二元論も顕著である。
とりわけ月経中の女性は穢れた存在であり、寺院に入ることができない。人々に災いをもたらし、破壊的な集団トランス状態を引き起こすのも、ランダ、チャロナランなどと呼ばれる邪悪な魔女の仕業とされることが多い。
バロン・ダンス
バロン・ダンスは、邪悪な魔女との戦いをえがいたチャロナラン劇をさらに観光化したもので、善を象徴する聖獣バロンと、悪を象徴する魔女ランダの戦い、と いう、わかりやすいストーリーにまとめられている。(ここでは人間と動物の役割は逆転している。)
とはいえ、両者の戦いには決着がつかずにこの物語は終わる。善が勝って悪が滅びるのではなく、善と悪が適切なバランスをとって共存していることが重要であり、邪悪なものも状況によっては逆転して神聖なものになる、という世界観を、この芸能の中にも見て取ることができる。
(文:蛭川立)
■Dictionary of Pandaemonium →サイトへ
バロン,英名:Balong
スマトラ、ジャワ、バリ。
「バナスパティ・ラージャ」(森の王)とも呼ばれる聖獣。
真っ赤な顔、ぎょろりと大きな眼、上の歯茎から突き出た2本の牙などが特徴。全身は、白く長い毛で覆われており、黄金の冠や立派なたてがみが、さらに威厳を高めている。
もとは、人間を襲って食らう猛獣であったが、供物を捧げられて以来、人間側の守護神となった。その主な敵は、邪悪な魔女ランダ。
■Interest noiz内、悪魔辞典 →サイトへ
バロン《Barong》出身地:バリ島
バリ島などで信仰されている聖獣。男性で右手の魔術(聖なる魔術)の使い手。
もとは人間を食う魔物であったが、供物を捧げられて人間たちの守護神となった。同じくバリ島に伝わる魔女ランダと対極をなす存在で、宿命のライバル同士となっている。
姿は獅子に似ているが、顔は人間に似ている。バリ島の伝統舞踊のバロン・ダンスで被られる仮面によると、真っ赤な顔に黄金のたてがみを蓄え、これも黄金の冠をかぶり、丸く飛び出た目玉に上顎から生やした2本の曲がった牙を持っていて、白い体毛に覆われた獅子という姿である。その金の顎髭を水に浸すと、魔女ランダに対抗するための聖水を作ることができる。
バリ島においては、善の象徴バロンと悪の象徴ランダが共にあってこそ世界が完全な姿であると考えられ、バロンとランダの戦いは永遠に決着がつくことがないという。
■インドネシア専科内、神話の系譜 →サイトへ
954 バロン/善獣
バリ島のバロン(Barong)は獅子、虎、象、雄牛の形をとる善獣である。
普通は獅子のもので歯をむき出した威嚇のポーズであるが、顔には愛敬がある。最も一般的な獅子型のバロンは形態のみならず風習まで日本や中国の獅子舞と似ている。
リー・クーン・チョイの「インドネシアの民俗」によればバロンの語源はバ(爬=蛇行する)、ロン(竜)としている。
魔女ランダに対抗できる唯一の守護者がバロンである。しかしバロンがいつも善であるとは限らない。時には人間を困らせることがある。
一方ではバリ人はバロンのみならずランダにも畏敬をもって扱う。神聖なバロンは大切にしまわれ、村の大事にしか出現しない。観光ショー用のバロンは別途に誂えたものである。
世界の一般常識ではバロンがランダに勝って「目出度し目出度し」である。しかしバリでは悪と善はそれほど単純なものではない。両者の戦いは永遠に続く。バリ人の宇宙観を表す二元論である。
955 ランダ/バリの魔女
バリの伝説によれば魔女ランダ(Rangda)の前身はチャロナラン(Calonarang)である。
ジャワの王女であるチャロナランはジャワ王家からバリ王に嫁ぐ、しかしバリ王は妃が魔女であることに気がつき彼女を森に追放しランダとなった。
魔女のチャロナランはアイルランガ王の母である。息子である王はクディリ朝を再興したジャワ王朝史の中でも名君として知られている。魔女として追放されたチャロナランは息子の王国を破滅させようと復讐を企てる。
王は兵を送り対抗するが、チャロナランの魔力の前に手も足も出せない。王側の高僧パラダは弟子をしてチャロナランの娘を篭絡し母親の秘密を知る。魔力を封じてチャロナランを滅ぼすが、罪の赦しを与えるのを忘れる。そのため彼女はよみがえり罪を犯しては再び滅ぼされる。これがチャロナラン伝説である。
チャロナランを引き継ぐ者がランダであり、ヒンドゥー教の死の女神であるドゥルガ神の化身といわれ、闇の世界の支配者であり、飢饉や疫病をもたらす。日本では鬼子母神として知られるハリティ神の神像がランダに繋がるのであろう。
ランダとは未亡人を象徴している。未亡人は死ぬべきとされ、生きている未亡人は魔女とされた。
ヒンドゥー教ではムサティア(mesatia)という未亡人の殉死火葬が知られている。夫の火葬の際に生きている未亡人も一緒に火葬するという風習はバリでも今世紀の始めまで行われていた。
夫を火葬する炎の中にジャンプ台のような所から飛び込む。すでに女性はトランスになっているから恐怖はないらしい。しかし、もし炎を前にして尻込みすることもありうるかもしれないので女性の身内が突き落とすため介添役として台上に上がるらしい。
ヒンドゥー教徒にとって火葬は霊魂が肉体を離れる最大の目出度い儀式であり、未亡人の生前火葬にも残酷という意識はない。必ずしも強制でなくまた身分の高い階級に限られていた。同時火葬に応じた女性には敬意が払われ神のごとく待遇されたらしい。
未亡人に限らず生前に仕えた召使なども希望者は殉死した。こちらの方は先に殺されて後に火葬だけ同時であるが、数十人が殉死したのを西欧人が目撃している。
オランダの植民地政策はバリ島については文化放任主義であるが、未亡人の生前火葬と殉死だけは黙視できなかった。生前火葬禁止はインドにおける英国の植民地政策の踏襲であるが、統治者の威信をかけた厳禁のためこれらの慣習はなくなった。オランダがバリ島で行った唯一の善政かもしれない。