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[Novel:13] -P:08-


「旭希のママさんに聞いたことが…。本妻さんに良く似た、美人三姉妹だとか」
「一番下の娘がな。オヤジが旭希さんを引き取りたがっていることを知って、怒鳴ったことがある」
「なんて?」
「自分達と旭希さん、母親と愛人。誰が一番大事なのかと。凄まじい形相でな。美人が般若になる瞬間は恐ろしいぞ」
 その場にいた鷹谷が、思わず眉を寄せるぐらい。
 バアン!と大きな音を部屋に響かせて襖を開け放ったかと思うと、彼女は関東有数のヤクザのトップに掴みかかった。女にしておくのが惜しいような迫力だったのは確かだ。
「佐久間さん、なんて答えたんですか?」
「怒鳴り返した。選べるか!ってな」
 唖然とする炯に、鷹谷は声を立てて笑っている。
「わしを誰だと思っている、そんな小さい男だと思っているのか。わしが一人に執着してみろ、そいつはあっという間に死んじまうぞ!…というのが、オヤジの信念なんだそうだ」
「信念って……はははっ」
 鷹谷が表情までつけて、その時の佐久間を再現するから。初めて見る鷹谷のおどけた仕草に、炯まで笑ってしまう。
 信念だなんて。きっと娘さんからすれば、男の身勝手だろうに。
「勝手な話だろう?」
「あはは…そうですね」
「それでも、真実であることは確かだ。あの人が一人になんか執着すれば、相手が焼き殺される」
 その身の内に飼った、業火で。人間には受け止めきれないほどの情に晒され、相手は逃げることも許されずに壊されるだろう。
「……それは、だって」
 反論しようとする炯の口元に、鷹谷の指が押し当てられた。
「お前も必要だと思うなら、必要なだけの人間を求めていればいい」
「鷹谷さん」
「なんだ?まだ不満か?」
「詭弁ですよそれ…。そんなもの僕みたいなのが、あなたと旭希を振り回していい理由になんか、ならない」
 困惑げな表情でまだ納得しないでいる炯に、溜息を吐いた鷹谷は、炯の細い指を口元へ持っていって、甘く噛んだ。舌で舐めあげられているのは、右手の人差し指。
「んっ……」
 竦める肩を、強い力が抱き締める。
「お前のこの指が、どれほどの人間に影響を与えるか、知っているか?」
「な…に…?」
「お前の紡ぎ出す世界に、どれほどの人間が魅了され、酔わされているのか。もう少し自覚しろ」
「あ…んっ…たかや、さ…」
 大きなベッドに身体を押し付けられる。乱れた浴衣の間から覗く炯の白い足に、鷹谷が自分の身体を割り込ませた。
「大勢の人間を振り回すだけの作品は、お前が作るんだ。この指が、誰かの世界を変えていく。その為にお前以上の犠牲が必要なら、私と旭希さんを選べばいい」
「やっ…まって、たかやさんっ」
「地獄の底でも、天上の彼方でも、私たちがお前を連れて行ってやる」
 これ以上話すのは面倒だとばかりに、鷹谷は炯の唇を塞いだ。


 帯が解かれ、乱れた浴衣をベッドに拡げて。炯の足はもどかしげにシーツを掻いている。どんなに優しく諭し、甘い言葉を囁いたって、鷹谷はどこまでも鷹谷のままだ。意地悪なやり方は変わっていない。
 はだけた全身にキスの雨を降らされ、炯は何度も首を振って嫌がった。されるのが嫌なんじゃない。敏感になっている身体を放っておかれるのに、もう耐えられないのだ。
「っ、やめっ…」
 ずっと弄られている胸の突起はもう赤くなってしまっていて、触れられると痛いくらいなのに。鷹谷の固い指先がつつくと、背中を甘い蜜がとめどなく駆け上がってくる。
 炯は自由にならない両手でもがいていた。拘束しているのは、炯自身がつけていた細い帯。旭希がするお遊びなんかじゃない。本気で縛られた手は、どんなに泣いて許しを請うても、開放してもらえない。きっと跡がついて真っ赤になっているだろうと思うのに。そう訴えるのに、鷹谷は一週間もあれば消えるだなんて言うのだ。
「た、かやさ…っ!、ゆるしてっ」
「どうしたものかな」
「やだ…っ!やああっ」
 両脚を擦り付けたくても、そこに鷹谷の身体が割り込んでいて出来ない。震える足の内側に擦り付けられている鷹谷のものだって、火傷しそうなほど熱いのに。それでも余裕の表情で鷹谷は、長い指をもう自身の蜜で濡れてしまっている炯の後ろに差し入れた。
「ひあっ、あ、あっ…」
「昨日は何度くらい、ここに旭希さんのものを挿れられたんだ?」
「こんな、ときにっ…!」
「こんな時だから、だろう?どうした炯。答えなさい」
「やっ…!やだ、たかやさんっ」
「言えば、楽にしてやると言っているんだ。それともこのままがいいか?」


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