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[Novel:13] -P:09-


 炯の立てた膝を引き寄せ、鷹谷は唇を押し付ける。ぺろりと膝頭を舐められ歯を立てられると、炯は首を振って背中を反らせた。
「いやああっ!」
「強情なやつだな」
 中へ入れた指をくるりと回して、炯の弱いところを掻き出すように、指を曲げてやる。
「あ、ああっ!」
 身体を震わせ、果てようとする細い身体。鷹谷は口元を吊り上げて、敏感になっている中心を握り締めた。
「やあっ、…ったい!いたいっ」
「まさか一人でイク気か?つれないヤツだ」
「やめ…っ!も、ゆるしてっ」
 頭の上で縛り上げられている手が、必死に枕を握り締めている。涙に濡れた端正な頬は、上気して染まっていた。しなやかな手足に散らされたキスマークは、もうどれが旭希に付けられたもので、どれが鷹谷につけられたものかわからない。
「って、ない!」
「なんだ?」
「おぼえてないって!かいすう、なんか!」
 何度聞かれても、記憶を飛ばすくらいに抱かれたのだから、何回なんて答えられるわけもない。もし憶えていたとしても、こんな追いつめられた状態で答えられるものか。
 理知的な瞳がぎゅうっと閉じられると、涙が零れて炯の髪を濡らしてしまう。必死に唇を噛んでいる横顔に、鷹谷もぞくりと込み上げるものを感じていた。
「それは残念だな」
「はやく、れてっ!」
「よく聞こえないんだが?」
「いれて…はやくっ、あなたを…なかにいれて…っ」
「これか?」
 炯の後ろに、鷹谷は固くなっている自分のものを擦り付けてやる。中で動かされているような錯覚に、炯は力の入らない足を鷹谷に擦り付けた。
「も、やだ…ひどい…」
「よく言われる」
「いじわる、しないで…」
「急に素直になったな。たまには焦らしてみるものだ」
「…しんじらんない…」
 睨み付ける炯の目は泣きすぎて赤くなっていて、迫力なんかないのだけど。楽しげな様子で見つめてくる鷹谷に、炯は諦めの溜息をついた。それを見計らっていた男はいきなり炯を解放して、中を突き上げる。
「な…ひっ!やああっっ!」
 柔らかく解されたところへ、熱いものが一気に押し入った。用意のなかった衝撃に、身体が強張ってしまって。限界まで追いつめられていた炯は、鷹谷の手の中に迸らせる。
「ああっ!あ、やあっ…!」
 吐き出す息が熱い。ぐったりと力が抜けていくのに、放ったばかりで敏感になっている身体を、鷹谷がまだ揺すり上げた。
「まって、まだ…!」
「どうした。欲しかったんじゃないのか?」
 息を吐く暇も与えてくれない。首を振る炯は、せめて手を開放して欲しいとねだるけど。どこまでも炯に甘い旭希と違って、鷹谷は笑みを浮かべるばかりだ。
「痛いか?」
「あたりまえですっ」
「そうか。それは悪かった」
「ほどいて、たかやさん…おねがいだから…」
「終わったらな」
 きっぱり言い捨てられた。
「あ、あんっ…も、ひどいっ…あぅ」
 鷹谷を酷いと責めるのは、もう何度目かわからない。鬼!なんて可愛いことを言う炯の、快楽に慣らされてだらしなく開く唇。縛り上げた手をまだ上から押さえつけて、鷹谷は奥を擦りあげた。
 首筋に噛み付いてやる。びくびく震える身体が、甘い。こんな甘い身体に、溺れない男なんかいない。
 怜悧な脚本家の顔。子供のように拗ねて、甘える表情。そうして、艶めかしく頬を染めるベッドの上の炯。
 何ヶ月も離れていた。抱きたいと思うときに、持て余した熱を忘れるのは大変な作業だったのだ。
 鷹谷は炯の身体を抱き締める。普段体温の低い冷たい身体は、鷹谷の熱が注がれて熱いくらいだ。溢れてくる感情に名前をつけるなら、愛しいという言葉が相応しいのだろうが。それでも鷹谷は、炯の手を解いてやろうとはしない。
 ……仕方がないことだ。
 こうして嫌がって泣きながら訴える炯が、可愛くて仕方ないと思う自分は、炯が言うように、酷い男なのだから。





 腕に抱いていたはずの炯がいないことに気付いて、鷹谷は身体を起こした。差し込む朝日が目に痛く、思わず眉を寄せる。
 炯の手を拘束していた帯を解いてやったのは、炯が気を失ってから。かわいそうに細い手首は腫れてしまっていたが、そこへ口づける鷹谷は苦笑いを浮かべただけ。
 繊細な格子窓から、明るい光が部屋を照らしている。離れの全体が見渡せるベッドに座ったまま、鷹谷は溜息を吐いた。

 ――思ったよりも早かったな……


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