【8月特集-プロット】 P:06


【Bを改めて考える】

■相模屋さんにて。
初めて大きな仕事を頼まれた、と嬉しそうな桜太。しかし時雨は渋い顔。
「どうしたの」
「いや…それさ。桜太じゃなくてもいいんじゃないの」
「え?」
「だってさ。それ、別に誰が行ってもいい用事じゃないか」
時雨さんはオコサマの気持ちがわかっていません。心配だから行って欲しくない、と素直に言えばいいものを。
「僕にはまだ早いって言いたいの?」
「え?いや、そういうわけじゃないけどさ…あ〜…いややっぱり、そう、なのかねえ?」
「僕には出来ないってこと?!」
「は?!ち、違うよ桜太っ」
出来ないんじゃなくて、まだ桜太とそんな遠く離れるのはイヤだ、ということなのですが。言わなきゃわかりません。
「……帰る」
「えええっ?!」
まだ今日は何もしてないのに?!
拗ねた桜太は相模屋さんから帰ってしまいました。

■尾行するオトナ
一人でふらふら歩いている時雨の前方に、桜太の姿。この人、とうとうストーカーになってしまいました。
隣町までは街道沿いの一本道なので良かったものの、町に着いた桜太は道に迷ってしまいます。つけてる時雨さんもハラハラ。

■迷子
しっかりモノの桜太さんですから、適当な人を捕まえて道を尋ねます。正しい選択なのに、その人が桜太の肩を抱いて道を教える姿に、時雨さんはイライラ。
こんな子供に欲情するオトナは、そうそういません。親切にしてもらってるだけですから!時雨さん落ち着いて!!
丁寧に礼を言って、再び歩き出した桜太さんはまた道を間違えてしまいました。もしかしてこの子、方向音痴?
きょろきょろ見回した桜太さんは、手近な店の暖簾をくぐって、お店の人に道を尋ねます。しかしそこは、お湯屋さん。
お兄さんたちのシモの世話までする湯女のお姉さんがいるところ。しまった!と、飛び出しかけた時雨さん。桜太くんは着崩した着物の色っぽい姉さんに連れられて、すぐに出てきました。慌てて隠れる時雨さん。
ちょっと赤くなっている桜太と、坊やにはまだ早いよ、と苦笑いを浮かべている湯女の姉さん。彼女に目的地のそばまで送ってもらいました。

■任務終了…でも。
目的の場所で仕事を済ませ、満足げに出てきた桜太さんは、もう帰るだけなのにまた道に迷ってしまいます。…やっぱりこの子は良牙のスジの子だ…
今度はその辺にいた、おじさんに道を尋ねました。舐めるように桜太を見ている男は、街道まで案内してやるから、とニヤニヤ笑いながら桜太の手を引っ張ります。
ついに来たか!この外道め!と。時雨さんが飛び出そうとしたとき、裏道に引き込まれそうになった桜太は大きな声で、きっぱり拒絶を始めました。
「僕まだ仕事の途中だからっ!早く帰らないと店の主人が心配するので、離して下さいっ!」
「てめ…っ」
「手が痛いってば!早く離してっ!!」
大きな声に、なんだなんだと、人が集まってきました。焦った男は桜太を放り出し、逃げ出します。
しっかりモノです。出来た子です。時雨さんの目に間違いはなかったようです。
ほっとした時雨さんは、先回りしてさっきの男を捕まえました。
「てめえ…ただで済むと思うなよ」
怒気満面。
しかし男だって、時雨にだけは変態ロリコン扱いされたくなかったに違いありませんから。

■帰宅
桜太は改めて道を教えてもらい、今度こそまっすぐ近江屋へ帰ってきました。おついかいの報告を終え、許しをもらって相模屋へ。
何食わぬ顔で迎えた時雨さん。
楽しげに短い冒険を語る桜太の声に、うんうんと付き合ってあげます。まるで何も問題がなかったように話をしていた桜太は、ふと困った顔になって、でも…と。失敗したことも口にしました。
「変なおじさんに、道を聞いちゃって…」
心配してくれた時雨だからこそ、ちゃんといいことも悪いことも離すつもりだったのに。
「でも上手く切り抜けたじゃないか」
なんて、時雨が言い出して。
桜太が驚きに時雨の顔を見ると、時雨さんは「しまった」という顔になっていました。

■痴話喧嘩
尾行がバレてしまいました。
「どこまで子供扱いするの時雨はっ!」
「い、いやだってさ。心配するじゃないかやっぱり」
しどろもどろに言い訳をする時雨と、拗ねてしまう桜太。
相手が大人でも子供でも、恋人のことは心配するものだろう?なんていう結論で言いくるめてしまえばどうかと思います。