【8月特集-プロット】 P:07


【Cを改めて考える】

■苦労症の子供
弥空っちはため息。
目の前には桜太が、イライラを隠すことも出来ずに座っている。
桜太の視線の先には、弥空の父がいた。彼はただいま、お仕事中だ。

■そもそも
なんでこんなことになっているか?というと。
なんとか和解出来た近江屋の主人と、父の時雨。ここに弥空を加え、これからのことを相談したのです。
今の近江屋に時雨を迎えることは出来そうにない。義父は納得してくれたが、義母はそうもいかない。女は厄介なので。
しかし時雨が他所で仕事をするのも、近江屋としては世間体が悪い。
そこで弥空が、時雨の顔の広さを活かした「近江屋外商部計画」を持ちかけました。責任者は弥空で、外交に時雨。中継ぎに桜太を配してはどうか、と。
リベラルな近江屋主人は「やってみろ」と許可を出してくれました。
ここまでは良かった。仕事も意外と順調に始まっている。
しかし、日ごと神経を尖らせている従業員が一人…。客の名前が女性ばかりだということに、納得のいかない桜太。
いくら弥空が、店だって客はほとんど女性だからと話しても、嫉妬に駆られた幼な妻は手がつけられません。
とうとうその日、時雨の後をつけると言い出した桜太に、弥空っちは朝から付き合っているのでした。
…だって、行き先は客なんだもの。

■最後の客
そういうわけで、ここは本日最後の客先。
ここまでで、桜太の嫉妬はMAXに近づいていました。だって色目を使う奥様やら、しな垂れかかった奥様やら、時雨さんてばモテるから。
弥空が屋敷の下働きに頼んで、時雨が通された隣の間に入れてもらっています。
襖を少しだけ開けて様子を窺う桜太と、いい加減に帰らないかと思っている弥空。
お客様と時雨は、楽しげな様子でしたけど。商談も終わって、さてという時に。時雨が奥様に何かを小声で囁き、奥様はころころ笑い出しました。なになに?何の話?!
立ち上がりかける桜太の手を、慌てた弥空が掴んだとき。奥様が身体を傾け、まるで隣の間からは時雨と奥様が重なったように見えて…
「時雨っ!」
もう、我慢出来ずに桜太は弥空の手を振り切り、中へ飛び込んでしまいました。

■お見通し
振り返った奥様と時雨。頭痛を抑えるように頭に手をやって、天を見上げた弥空。涙を浮かべる桜太の耳に届いたのは、奥様と時雨の笑い声。
「…時雨?」
「あははは、ね?可愛いでしょ」
「まあまあ本当に。可愛らしいこと」
可愛い尾行の存在に、時雨さんはちゃんと気づいていました。
奥様と笑いあう時雨は、呆気に取られている弥空をちらりと見ました。
「安心したかい?若旦那」
「…趣味が悪いですよ、お二人とも」
「弥空さん…?」
「父にはお見通しだったってことですよ。桜太くんは奥様と父のいたずらに、まんまとひっかかったんです」
「え……」
呆然とする桜太。弥空も肩を竦めながら、二人のいる部屋に移動してきました。
「本当にお前さんは、桜太に甘いねえ」
「放っといてください。…いつから気づいてたんですか」
「ん?朝から。…お前さんもご苦労なことだね」
どこか嬉しそうな時雨の様子に、桜太は赤くなるやら涙が止まらないやら。にこにこ笑う奥様は桜太を手招きしながら「こんなお婆さんにやきもちを焼いてどうするの」と仰います。
「…そんなことないもん」
「あらあら」
「奥様、きれいだもん!時雨、きれいな女の人大好きだもんっ!」
照れギレを起こしています。
「あたしは信用がないねえ」
「だって本当でしょっ!時雨、奥様みたいにきれいで、品のいいお着物選ばれる方が大好きでしょっ!」
わーん。(笑)
「あらあら、まあまあ。どうしましょ」
天然の桜太に褒められて、まんざらでもない様子の奥様。
終わったはずの商談がまた始まって、彼女はたくさん商品を買って下さった上に「今度は一緒にいらっしゃいな」と言いました。

■何だったの今日は…
ぐったり疲れた様子の弥空っち。
「もういっそ、二人で回ったらどうです」
「ん?」
「その方がきっと商売になりますよ」
「そうかねえ」
「ええ。そりゃあもう。これ以上あなたたちの痴話喧嘩に巻き込まれたくありませんから」
「…ごめんなさい、弥空さん」
なんて言うくせに、桜太はしっかり時雨の着物を掴んでいる。弥空はため息を吐きつつ、先に帰って行った。

■考えてみよう
一緒に仕事をする、という弥空の提案。
それはなんだか、桜太には夢のような話だけど。時雨は邪魔じゃない?と、不安げに聞いている。
あたしは嬉しいよ、なんて応えてやりながら、ラヴラヴしてればいいじゃない。このバカップル。(by弥空)