【ストーリー概要】
まだあくまで提案の段階なので、このまま行くのか、はたまたこれじゃマズイのか。ご意見待ってます。ちなみにどこまでが連載第一回で、全何話なのかもわかりません……orz
あの、長いです。ごめん。(先に)
ついでに各シーンごと、いらない一言感想つき。(笑)
■ 初対面
まだ朔が監禁されている頃なので、圭吾はいつもどこか苛々している。
客が来ている時にはけして近づいてはいけないと言われている離れ。今日、客が来るという話は聞いていなかったので、食事の支度を済ませた桜太はいつも通り圭吾を呼びに来た。
「兄ちゃん、ご飯が…」
躊躇なく声をかけ、扉を開けた桜太は、その時初めて中に圭吾以外の男がいることを知る。圭吾と同じくらい背が高く、緩くうねった長い髪を一纏めにしている男。歳は圭吾より上だろう。
「桜太!客のいるときは入ってくんじゃねえって、何べん言わせんだ!」
怒鳴られ、驚いて立ち竦む桜太。男は「何そんな怒鳴ってんだい、先生」と穏やかな声をかけて、桜太を庇ってくれた。
それでもまだ不機嫌な様子の圭吾は、自分のしている理不尽なことへの後ろめたさと、それでも堪えきれない朔への欲求に苛ついている。男は肩を竦めて、ゆっくり立ち上がった。
「八つ当たるんじゃないよ、こんな子供に。大事なもんまで傷つけるような所業なら、やめちまいな。後悔するよ」
顔を背けて「てめえには関係ねえ」と呟く圭吾にそれ以上何も言わず、男は離れを出て行こうとする。呆然と男を見上げる桜太。
涙を浮かべているようにさえ見える潤んだ瞳を見て、男は桜太の頭にぽんと手を置いた。大きな手がゆっくり桜太の髪を撫でる。深く優しい笑みを向け、そのまま男は立ち去った。
(恋はするんじゃなくて、落ちるんです。By橘)
■ キス
男が再び圭吾の家を訪れたのは、朔と共に住むようになって、しばらくしたころ。離れではなく母屋の方へ顔を出し「邪魔するよ〜」と入ってきた男に、朔は驚いた顔で「時雨さん」とその名を呼ぶ。
「あれ、聞かれなかったのに。先生に聞いたのかい?久しぶりだね朔」
笑みを浮かべる朔と、少し拗ねたような顔をしている圭吾。
「いい加減、その先生ってのやめやがれ。虫唾が走る」
「っと、そうだった」
「何しにきたんだ、時雨」
「いや、あんたが怪我したって聞いたからさ。とうとう朔に刺されたのかと思って」
大したことじゃない、と答える圭吾は、過去に朔と関係を持っていた時雨の登場に不機嫌そうだが、見ていてわかるくらいに落ち着きを取り戻していた。すぐそばに控える朔のおかげだということは、聞かなくてもわかる。
「なあ朔、(自分の)背中の牡丹。圭さんの仕事だって聞いたんだろう?もう一度見るかい、随分気に入ってくれただろ」
時雨はからかうが、含まれた意味に気づかない朔はふわっと笑って「是非!」と嬉しそう。相変わらずの天然発言に、圭吾は朔の腕を引っ張って細い身体を引き寄せた。
「なに嬉しがってんだ、あんたは!」「え?だって」「だってじゃねえよ!」「またそうやって、一方的に怒鳴るんですか?!」「怒鳴るだろう普通は!あんたもう俺のもんになったって、自覚してねえのか?!」「してますよ!それとこれと何の関係があるんですか!」「あるだろうが!背中が見えるようなこと、すんのか?!」「しませんよ!何言ってるんですかっ」
ぎゃあぎゃあと煩いことこの上ない。始まった痴話喧嘩としか言いようのないものに、やれやれと肩を竦めて見せた時雨は、所在無く黙って座っている桜太を見つけた。
「村のはずれまで送ってくれるかい?」そう言われ、連れ出された桜太は時雨と呼ばれた男と並んで歩いている。
「朔が家に来て、寂しいかい?」
聞かれた桜太は、驚いて首を振った。朔が一緒に暮らすことは、自分の望んだことだから嬉しいと。そうは言うがふと黙って「でも」と呟いている。
「どうした?言ってごらん」
「うん……。あのね、こうして、ね?」
桜太は時雨の手を握る。
「朔はぼくと手を繋いでくれるんだけど。でも朔、兄ちゃんと手を繋ぐとき、震えてるから……」
それを見ると、また朔がいなくなるんじゃないかと、不安になる。幼い子供の可愛い不安に、悪戯心を刺激された時雨は少し笑って、繋いだ手を強く握り、桜太を抱き上げて道から外れた。
木が生い茂る草陰に連れ込まれても、何のことかわからず桜太はきょとんとしている。どうしていいかわからない桜太を抱き込んで、時雨は唇を重ねてやる。
驚いて固まっている桜太の唇を開放し、時雨は笑った。
「ほら、震えてる」
桜太の手を握り、もう一度桜太の唇を舐めてやる。
「嫌?したくない?」
聞かれた桜太は、混乱しながらも首を振った。可愛い仕草にますます笑みを深くして、時雨は優しく桜太の震える手に口付ける。
「手が震えるのは、こうして。可愛がって欲しくて、胸がどきどきするからだよ。朔も……君もね」
もう一度名残り惜しげに唇を重ねた時雨は、そっと口の中を舐めて、再び桜太を抱き上げると道に戻った。
「もうここまででいいよ、見送ってくれてありがとう」
笑いかけられ、桜太は真っ赤になって踵を返すと走り出した。
(時雨さん……犯罪です)