【会話例】 P:02


「直人、夏休みどうすんの?」
「まだ考えてないけど、なんで?」
「今日終業式だろ。お前トロい」
「でも惺に何も聞いてないし」
「ナオ今年はバイトしないの?」
「う〜ん、惺が予定ないって言ったら、ちょっとぐらいするかも」
「またかよ…お前ホント、惺さんのことばっかだよな。いい加減、自分で決めれば」
「そんなこと言われても」
「バイトしたけりゃ、惺さんにバイトするって言えばいいし。行きたいところがあるなら、そう言って行けばいいじゃん」
「でも惺がどっか行くつもりなんだったら、ついて行きたいし」
「惺さんからは何も聞いてないの?」
「うん」
「じゃあ行かないんだろ。つーかさ、惺さんが今まで、積極的に夏休み、出かけたことあるか?中等部のとき北海道行ったのだって、じいちゃんに説得されて渋々行ったんだろ」
「まあ…そうだけど」
「しかも直人のことはオレらに任せっぱで、じいちゃんとホテル缶詰だったし」
「うん……」
「……おい」
「………」
「お前まさか、まだあん時のこと、拗ねてんの?」
「だ、だってさ。せっかく北海道まで行ったのに、ずっと二人一緒で俺のことなんか放ったらかしだっただろ。俺は惺と旅行なんか初めてで、嬉しかったのに」
「あ〜もう、お前マジしつけえ。いい加減ウザい」
「ナツ、やめなよ」
「だってさ、こいつホント何かって言えば惺が惺が惺が。惺さんのことばっか。なんなの?お前にはオレらが見えてないわけ?その北海道だって、むくれっぱなしのお前の面倒ずっと見てたの、アキなんだぜ?覚えてんのか」
「覚えてるよっ…それは、悪かったと思ってるし…」
「もういいよ、そんな昔のこと。ナツもほら、そんな話をしたかったんじゃないだろ」
「話?って、なに?」
「だからさ、お前今からオレらに付き合えよ。じいちゃんとこ行くから」
「じいサマの?でも俺、惺に何も言ってこなかったし」
「大丈夫だよ。惺さんのことは、おじい様が呼んでくれるって言ってたから」
「え…そう、なの?」
「ナオ?どうしたの」
「俺、何も聞いてない…」
「あ、えっと…ごめんね。今日学校でナツが急に言い出して、おじい様に携帯かけたんだ。だからナオが家を出たときには、まだ惺さんまで話が回ってなかったんだよ」
「そっか、そうなんだ」
「ほんとお前…ガキかよ。タメのくせに」
「いいだろ…惺のことは、別なんだよ!」
「はいはい」
「ナツもいい加減、しつこいよ。ほら行こう?車もう来てるから」

(で、笠原本家へ移動)

「じいちゃん、来たぜ〜」
「おお、来たか千夏。千秋も」
「こんにちは、おじい様」
「こんにちは…。惺?どうしたんだよ」
「…おかえり、直人」
「うん。ただいま」
「久しぶりだな、直」
「…お邪魔してマス…」
「本当にお前さんは最近、呼ばなけりゃ顔を見せんな」
「ごめんなさい。…なあ、惺?どうかした?」
「放っておけ。こいつは無理矢理呼ばれて、勝手に膨れとるんだ」
「呼んだ?ああいうのは、拉致っていうんだよ。いつもいつもお前の勝手が通ると思うな」
「通すさ。通っているだろう?」
「年寄りはおとなしくしていろ」
「お前さんにだけは言われたくない台詞だな」
「なんだって?」
「わかったわかった。それで?何か話があるんだろう、千夏?」
「うん。今日、終業式だったんだけどさ。明日っから夏休みだし、どっか行きてえなってアキと話してて」
「だったらナオも一緒に行きたいねっていう話になって」
「でもどうせこいつ、惺さんが行かなきゃどこへも行きそうにないし」
「おじい様が一緒だったら、惺さんにも付き合ってもらえるかなあって」
「どうして僕が…。直人、行って来い」
「でも、惺が一人になっちゃうじゃん」
「お前な…僕を何だと思ってるんだ」
「違うよ。惺が平気なのはわかってるけど、俺が嫌なんだもん」
「いつまでも子供みたいなことを言うんじゃないよ」
「だって…」
「な?ほら、こーなるだろ?だったらもう、最初っからじいちゃん巻き込んだほうが話早いじゃん」
「おじい様は何かこの夏、ご予定がおありですか?」
「いや、構わんよ。そうさな…若いのに付き合うか、惺?」
「嫌だ。面倒くさい」
「年寄りくさいのはどっちだね、まったく…千夏、千秋。行きたい所はあるのか?」
「場所は決めてねえけど」
「ナツは泳ぎたいって言ってたじゃない」
「そりゃやっぱ、夏なんだし海行きたいけどさ。それはいつでもいいから」
「ふむ……」
「どうせ母さんたちと行くだろうし。なあ、じいちゃん。どっか行こうよ」
「そうさなあ…」