■惺と直人の会話例
■英語のテストが30点でした編
「そこ、座りなさい」
「…あの、惺?」
「座りなさい」
「………。はい」
「何の話か、わかってるね?」
「うん。…あの…。はい…」
「お前はちゃんと勉強したと、そう言わなかったかな」
「言ったよ、言ったけど…」
「けど?言い訳か?僕はお前から、言い訳なんか聞く気はないね」
「………。はい。ごめんなさい」
「どこが間違っているかは、自分でわかっているんだね?」
「うん…どうしてもその、テストのときに文法が思い出せなくて、それで…」
「文法なんてものは、覚えるしかないと言ったろう?」
「そうだけど…」
「…まったく。言い訳の多い子だね」
「惺……。ごめん」
「僕に謝っても仕方ないんじゃないか?学校のテストに左右されるのは、お前なんだから」
「でも、惺が怒ってるから…」
「僕が怒っているから、とりあえず謝っておくのかい?随分だね。僕は怒ってなどいない。呆れているだけだ」
「惺…惺、ごめんなさい。次は頑張るから。ちゃんと勉強するから…」
「このままでは、頑張っても同じことだと思うけどね」
「………」
「黙っていても、始まらないだろう?自分でもこの点数に、危機感は抱いているのかい」
「うん」
「なら、教科書を出しなさい」
「え…教えてくれるの?」
「仕方ないんじゃないか?他に頼れる相手がいるとでも?アキくんやナツくんに、いつまで甘えるつもりなんだい、お前は。彼らは来年、大学部へ行くんだということを、わかっていないのか?」
「わかってる。持ってくるから、待ってて!」
(仕方なく勉強を見てくれる惺と、覚えの悪い直人の勉強会、小休止)
「お茶を淹れてくるから、待っていなさい」
「いいよ惺、お茶だったら俺が…」
「お前が淹れた不味いお茶を飲むくらいなら、自分で淹れた方が早いよ。そんな暇があるなら、もう一度いまのところに目を通したらどうだ」
「うん…ごめん」
「まあ、いい。お前は休んでなさい」
「…はい」
「…そういえば、もうすぐ体育祭じゃないか?」
「あ、うん。来週」
「またナツくんの独壇場なんだろうね」
「なんかね、今年は生徒会をどの組からも独立させて、チームにするんだって」
「お前も入るのか?」
「うん。どうせナツのいる組が勝つんだーって、運動部の人たちが言い出して。じゃあもう生徒会は別にしようぜって、ナツが言い出したんだ」
「彼の言いそうなことだな」
「ナツ一人で、七種目ぐらい出るんだよ。いまからアキが心配してる。ああ見えて責任感が強いから、絶対無理するんだよ、って」
「お前は?」
「え、俺?俺は四種目ぐらい。走るのは100m走と最後のリレーだけなんだけど、ナツが今日、急にアンカーで走れとか言い出して。アンカーは千夏くんじゃないの〜って、女子部の子たちが騒いでた」
「運動神経ぐらいしか取り柄はないんだから、やればいいだろう?」
「そうなんだけど…」
「なんだい」
「……。惺が見に来てくれたら、嬉しいなって」
「またお前は…何度同じ問答を繰り返すつもりなんだい、馬鹿な子だね。僕に一日、炎天下でぼうっとしていろというのか?」
「今年は父兄席にテント張るって言ってたよ」
「そういう問題じゃない」
「あの、じいサマも来るって言ってたし」
「泰成が?…物好きな」
「最後だけでも、ダメ?リレーは3時くらいになるってアキが言ってたから…その時だけでも」
「僕が行こうが、行かなかろうが、同じことだろうに」
「同じじゃないよ!惺が見に来てくれるんだったら、俺絶対に一位になるから!」
「だから。僕が行かなくても、お前は一位を目指すんじゃないのか」
「そ、そうだけど。でも惺が見ててくれたら、気合が違うっていうか、頑張れるっていうか…だって惺、一度も見に来てくれないじゃん…」
「去年の文化祭には行ったろう?」
「俺、体育祭の方が見て欲しいもん…」
「まあ、それしか取り柄はないからな」
「ねえ惺、お願いだから…一度だけ。来年はこんな我がまま言わないから」
「………。まったく」
「惺、お願いっ!…ちゃんと英語も他の教科も、結果が出せるように頑張るよ。だから、一度だけ見に来てよ。俺がアンカーなんて、最初で最後だと思うし」
「………。わかった」
「え……ホントに?」
「絶対に一位になるんだな?」
「うん!絶対になる!」
「あとで言い訳をしたら、二度とお前の言葉は信じないが、それでいいんだな」
「いいよ。転んだって、失格になったって、絶対に言い訳しないから。俺、一番で惺のところへ帰ってくるよ!」
「僕のところへ帰っても仕方ないだろう?」
「じゃあゴールに!来てくれる?!」
「ああ…泰成に車を出すよう、言っておく」
「やった…!ありがとう、惺!」
(というような感じでどうでしょうね?)