【ACT:1】
ファミレスでナツアキと夕食。今日は惺が仕事に追われて、部屋に篭ってること、朝聞いたから。
いつまでも惺離れ出来ない俺に、ナツが苛ついている。アキに宥められながら、出会った頃を思い出していた。
両親に捨てられ、惺に会って。
目を覚ましたのは、じいサマの家。
惺はじいサマに俺を押し付けようとしたらしいけど、俺があんまり惺から離れないから、逆に押し付けられてしまった。
家に帰ったら、まだ惺は仕事中。
何も食べていない様子のキッチンで、惺のために夜食を作ってみたけど…あまり美味しそうじゃない。でもそれを持って惺の部屋の前へ行き、出てくるまでしゃがみ込んで待ってみる。
惺を好きな気持ち。
惺と自分を繋ぐ星型の痣。
ぐるぐる考えていると、惺が出てきた。作った夜食を見て、なんだかんだ言いながらも食べてくれた。
ずっと待ってた俺に、昔の姿が重なったのか、惺は俺の手を引いて部屋まで送ると、ぎゅっと抱きしめて頭を撫でてくれた。
「おやすみ」
そう言って別れた、部屋の中。俺は抑えきれない惺への思いに、蹲ってしまった。
【ACT:2】
今日は学校で、三者面談があった。大学部へ進学するなら問題はないけど、外部進学を考えるならもう少し頑張った方がいい、と言われて帰ってくる。外部のことは考えてない。ナツアキもそのまま内部進学が決まってるし。
でも家へ帰ってから、惺の様子がおかしい。不思議に思っていると、真剣な顔で話があるって言われた。
なんだろう?って、思って。惺の部屋に呼ばれた俺は、高等部を卒業したらこのマンションを出て一人暮らしをするよう、言い渡される。
目の前が真っ暗になった。
何を言われているのか、理解できない。
もう子供じゃないとか、自分の進む道を考えろとか、色々言われるけどよくわからない。
惺とずっと一緒にいたいのに。
そう訴えた俺に、惺は無表情のまま「迷惑だ」と言い出した。そうして俺が出て行かないなら、自分がこの家を出て行くって。
頭に血が上った。惺が俺の前から姿を消す気でいること、言われなくてもわかってしまった。
そう思ったら、目の前が暗くなって。俺は思わず嫌がる惺を抱きすくめ、ベッドへ押し倒してしまっていた。
惺の嫌がる声が、身を捩る強い力が、俺の理性をどんどん奪っていく。
【ACT:3】
惺と身体を繋ぎ、勢いだけで彼を犯してしまった。途中から惺の声が甘く変わったのに気づいたら、もう止まることなんか出来なかった。惺は初めてじゃないんだって、わかったから。嫉妬と欲とに責め立てられて、俺は惺を抱いていた。
でも、夜が明けて。気を失った惺を見つめていたら、後悔ばかりが頭を支配する。
惺の腰の辺り、幼い頃に見た星型の痣。そこに触れていたら、涙が溢れて仕方なかった。
どんなに傷つけただろう。惺に嫌われてしまうのが怖い。
目を開けた惺に、泣きながら謝った。でも惺は、何も言ってくれなくて。そういう歳なんだろうなんて、酷いことを言うんだ。
部屋を出ようとする惺を引きとめ、俺は必死に訴えた。
惺が好きなんだ。
他の誰でも、代わりになんかならない。
惺のためなら、なんだってする。惺以外の誰もいらない。言い縋る俺を見つめた惺は、ため息をついて「思い込みだ」と突き放した。思い込みなんかじゃないと言おうとしたけど。
「僕はお前をそういう目で見たことなんかない。これからもない。…絶対に」
惺は冷たい目で、俺の告白を撥ねつけた。
【ACT:4】
それからの俺は、何度も何度も惺に気持ちを伝えたけど。惺は振り返ろうとすらしてくれない。冷たい惺の態度は、本気で俺を追い出すつもりでいるのだと語っている。
惺と離れるのは、想いが伝わらないことより辛いんだ。今は受け入れてくれなくてもいいから、だから俺が本気だってことだけわかってって。そう言うけど、惺は「何をしても無駄だ」って、俺を受け入れようとしない。
ただ、わかって欲しかった。俺の気持ちが、子供の思い込みでも、勢いで口にする一時の感情でもないこと。
だから思い余って、つい言ってしまった。
「身体は?俺とのセックスは、そんなに嫌だったの?気持ち良くなかった?」
俺の発言に、惺はどうしたのか急に黙ってしまって。躊躇う表情に、俺は思わず「じゃあ身体だけ!」と叫んでいた。
「身体だけでいいよ…ねえ惺。少しでも気持ち良かったんなら、俺の身体だけでも受け入れて」
自分でも相当バカな発言だと思うのに。どうしてか惺は、その日から毎日のように、俺と寝てくれるようになったんだ。
毎日毎日、惺の身体を抱いている。抱くたびに惺の態度は柔らかくなる。
でもそれはベッドの上だけだ。