惺はつっぱねて、背を向けてしまった。
「僕は過去に一度、お前と同じように星型の痣を持つ女性と出会っている。お前が気にしなくても、もう一度会える可能性があるだろう…忘れてしまいなさい」
俺は惺の背中を見つめていた。震えている、背中を。惺の背中は、こんなに細かったんだろうか?いままでずっと追いかけていた背中が、こんなに頼りなく華奢だったなんて。
立ち上がって、抱きしめた。なんで自分が泣いてるのかわからなかったけど、でも。抱きしめて初めて、惺も泣いてるんだって、気づいたんだ。
「その人とは、何年前に会ったの?」
「…………」
「あと何年、待つつもりなんだよ」
「お前には関係ない」
「なんで?!なんで俺じゃダメなんだよ惺!」
「お前を巻き込みたくないんだ!!」
俺の腕を、惺が振り払うから。俺は何度だって惺を捕まえて、抱きすくめる。
「イヤだよ…そんなの、絶対にイヤだ」
「お前には関係ないと言ってるだろう?!」
「関係あるだろっ?!俺を惺の運命に巻き込んでよ!」
俺の言葉に、惺がびくっと震えた。
…ねえ、惺。ダメだよそんなの…
惺の顔を引き寄せて、唇を寄せる。
重ねても、惺は嫌がらなかった。何度も何度も、唇を重ねて。流れてくる涙の味が、俺と惺の口を濡らせている。
「惺…俺は、たった四日でも耐えられなかったんだよ…?惺は強いから、平気だって言うかもしれないけど。俺は、惺がまた一人になるかもしれないって知って、それでも離れるなんて、出来ないよ…」
「直人…」
「いいよ惺…俺のこと、利用したらいい」
「っ!…何を言って…」
「全部、終わらせよう?…俺が終わらせてあげるよ。惺が苦しいの、俺がとってあげるから…」
首を振る惺のこと、強く抱きしめた。
「俺が出来ることなら、なんでもしてあげる。だから…それからでいいから、選んでよ…」
「な…おと?」
「全部終わってから、それから考えて…?惺が好きだよ…俺はずっと、惺といたいんだ…」
惺の顔を覗き込むと、彼は困った顔で笑って、それから俺に口付けてくれた。
惺を抱き上げて、初めて抱いた時と同じ惺のベッドへ運ぶ。あの時のベッドで、惺を抱いた。
あの時あんなに嫌がって暴れていた惺が、艶めかしい声を上げて俺に身を任せてくれる。自分から俺を欲しがってくれた。
夜中になっても、俺は全然眠れなかった。
惺の髪を弄っていたら、ふっとその目が開いて。俺を見ると、照れくさそうに頬を染め、ふいっと身体を背けてしまう。
「惺…好きだよ」
肩に口付けて「愛してるから」と囁いた。くすくす笑う惺に気づいて顔を上げると、振り返ってくれた。
「惺?」
「直人、わかってるか?」
「うん?」
「千夜、お前と身体を繋げば、私は呪われた運命から解放される」
「うん。わかってる」
「千夜だぞ?…三年足らずだ」
「うん…え?あれ?」
「毎日していたら、お前は私と年齢差を縮められないままになるな」
「あ…や、でも…え〜…」
すぐにでも惺を解放してあげたい。でもそうしたら、いつまでも俺は惺に子供扱いされたままだ。悩む俺の唇を、惺がぺろっと舐めた。
「どうする?」
「う〜…あ。ねえ惺。一晩に二回しても、カウントは一回?」
「は?」
「昼にしたら、ノーカウント?」
「……。そんなことを聞いたのは、お前が初めてだな」
「試してみよっか?」
「あっ、こら!」
惺を組み敷いて、脇の下からするっと惺の身体を撫でる。
「ダメ?」
首をかしげて聞いたら、惺は笑っていて。
「ばか」
そう言って、俺の頭を引き寄せてくれた。
【了】
ってな感じで書いてみましたが、どんなものでしょうね?
惺の口調がまだいまいち掴めてない…orz