繰り返す身体が、どうしようもないんだと叫んでいた。身体が勝手に動いて、腰が揺れる。
「あ、あっ…ああんっ…ああっ」
上がる悲鳴は、もう限界だと訴えているのに。それでも中へ圭吾を擦りつけ、朔は何度も上下に身体を動かしていた。
「も、だめっ…!やだ、けいご…っ」
そんな風に言うくせに、朔は自分で身体を揺すりあげている。下から見ている圭吾は、満足そうに頬を緩めていた。朔の白い身体が染まって、悦楽にだらしなく口を開き、自分の名前ばかり呼ぶのは、たまらない光景だ。
「い、くっ!いく、けいご…!」
「っ…ああ、いいぞ。いけよ」
許してやるのに、何に抗うのか朔は頭を振っている。でも圭吾が強く朔の腰を引きつけ、前を扱いてやると、甘い唇から悲鳴が零れた。
「ひ、ぃ…あああっ!」
「っ…!」
ぎゅうっと締め付けられ、圭吾も朔の中へ己を解き放つ。
倒れ込んでくる朔の身体を、怪我に障らないようゆっくり抱きとめてやった圭吾は、愛しさに何度も何度も髪を撫でてやって。
ふと、何かを思いついたように、朔の背中を撫でた。
「…なあ、朔」
「ん…ぁっ」
身体を繋いだまま、まだぼうっとしている朔には、届いていないかもしれない。圭吾は背中を撫でて、起き上がらなければ見えないけれど確かにそへ刻まれている、朔を苦しめ続けた痣を指でたどった。
「あんたの身体、傷がつかないんだよな?」
「ふ…ぁっ、んんっ」
「朔?」
「っ…。そう、そうです…」
この身体は、どんな傷でもすぐに癒えて跡形も残らない。何度か息を吐き、ようやく身体を落ちつかせた朔は、圭吾を見つめる。何事か考えるかのように天井を見上げていた圭吾は、視線に気づいて朔の顔を引き寄せ、その額に唇を押し付けた。
「落ち着いたか?」
「…はい」
恥ずかしそうな表情。そこには幼さが見えて、圭吾はいつだったか、朔に無理矢理酒を飲ませた夜を思い出していた。
唇を舐める朔の仕草は、ここを吸って、とねだっている。
「痣が消えたら、傷は残るようになるか?」
「え…?」
圭吾の言葉が良く理解できない。
薄く開いた口に舌を差し入れた圭吾は、ゆっくりと中を舐めまわした。
「あ、んっ」
「どうだ?」
「ん…い、い…」
ぼうっとした声。
圭吾は苦笑を浮かべた。
「そうじゃなくて。朔の身体は、痣が消えたら俺たちと同じようになるんだよな?」
自分の答えがちぐはぐだったことを知って、朔は恥ずかしそうに頬を染めた。そのまま頷いた朔を見つめて。圭吾は長い髪をゆるく引っ張る。
「じゃあ、その時は。俺が彫ってやるよ」
「え……?」
「もっと似合う、朔の美しさを引き立たせるようなものを。な?」
腕を突っ張って圭吾の顔を見下ろす朔は、深い愛情を灯して笑みの形を成している圭吾の瞳に、自分の姿を見ていた。
ただ、死にたくて。
それだけで、圭吾に抱かれていたのに。
命の灯火が消えてしまうまで一緒にいようと囁いた圭吾は、まるで傷を負う朔の身体が楽しみだとでも言いたげに、笑っている。
朔は圭吾の首筋に唇を押し付けた。同じ形をした痣に、舌を這わせる。
「…じゃあ、月も描いてくれますか…?」
「月?」
「そう…。私の痣は、消えてしまうから…だったら、あなたと同じ…月が欲しい…」
ずっとあなたに縛っていて。
囁く朔はゆっくりと目を閉じ、幸せそうに微笑んでいた。
【了】