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[Novel:03] -P:04-


「そうだな〜。確かにそうかも。こう、チマチマしたモンにいっぱい色んな機能ついてっと、弄り倒したくなんだよな」
 だからこそ、今までやってこれたと言えないこともない。この100年で世界は目まぐるしく変わった。
 身の回りにあるツールなんて、100年どころか十年前でも思い出すのが難しい。
 ヒロユキはあんま得意じゃねーよなこういうの、と。笑う晃が、あんまりにもかわいくて。その分、傷つけたことを悔しく思う。
 そうっと手を伸ばし、きれいな輪郭を優しく包んだ。
「一度、会いに行こうか」
「誰に?」
「まどかに」
 何を唐突な、と。目を見開いて、晃はすぐに拗ねた表情を作ると宏之の頬を痛くないように抓った。
「いいのかよ〜?二階堂が言ってたぜ。まどかにはオマエが王子様に見えてるんだって。そんなとこにオレが行ったら邪魔じゃね?」
「邪魔なんかじゃない」
 晃が不安になるなら、他の事なんかどうでもいい。もしまどかが不満だと思っても、宏之にとって大事なのは晃なのだから。

 真剣な目で訴えてくる宏之に、すこし照れて。晃は頬を撫でる気持ちいい手を自分から振り払い、ベッドから転がり降りる勢いを使ってど〜んと押し倒した。
 床に膝をついたままだった長身は軽々と組み敷かれてしまう。
「っ、コウ?」
 きれいに筋肉のついた痩身。
 この身体には、三時間の舞台を暴れ回るスタミナがちゃんと蓄えられている。
「オレさ、ちっちゃい機械モノ弄るの好きだけど、デカい男弄るのはもっと好き」
 馬乗りになって、かあっと赤くなった宏之の襟元を掴み上げる。ムリヤリ引き寄せて、口づけた。薄く開いた唇から舌を滑り込ませ、対応し切れていない舌を吸い上げる。
「んっ……ん」
 スイッチが入ってしまったら、立ち止まるのは晃の主義じゃない。
「いーのかよ?」

「なに、が……」
「オレなんか連れてったら、絶対にまどかと王子様取り合ってケンカになるぞ?宏之かかってんだから、子供にだって容赦しねーもんオレ。まどかのこと泣かせるかもな」
 ああ、そのことかと。揺れかけた宏之の焦点が、可笑しそうにすっきりと熱を押しのけた。
 すうっと熱が引いた
ことには気付いたけど。やめる気などないので、気にしない。
「構わない」
「二階堂が怒るから。絶対」
「いいんだ。俺は、コウを選ぶから…」
 ずるいなあ…と、思って。晃が苦笑いを浮かべる。
 熱っぽい視線。無口だからなんだというのか。宏之は饒舌だ。それが、言葉ではなく視線や、指先。それから……舌先だというだけ。

 引き寄せられた唇に、晃は甘く噛み付いた。噛み付いたところを舐めて、そのまま宏之の口腔に侵入していく。
 歯列を舐め、舌を合わせている間に、宏之の大きな手がTシャツの中へ忍び込んだ。触られたところが熱い。
「んんっ……ん、ちょ、待て」
「待たない」
 ぎゅうっと肩を押し、もう一度宏之の身体を倒してしまうと、煩わしそうに自分でシャツを脱ぎ捨てた。欲に少しずつ濡れていく目が、下から見上げているのに少しだけ興奮して、宏之のシャツも引き上げてやる。
 胸元の突起を、細い指先がつついた。
「ここ。オマエも感じるよな」
「コウほどじゃないけどな」
「言ってろ」
 敏感な先端を舌でつついて、唾液を擦り付けて。吸い付くたび、茶色い猫っ毛を弄る宏之の指先が、ぴくりと止まる。気を良くした晃は片手で開いた胸をこね、押すのと同時にきゅうっと強く吸った。
「ふっ……、コウ」
 たまらないから離せ、と。髪をゆるく引っ張られ、名残惜しそうにコウは身体を上げる。
 自分の下で、力の入らない身体が熱い息を吐いている。胸元がてらてらと濡れているのが、あまりにも扇情的だ。
「い〜い眺め」
 正直に言うと、宏之が困ったように眉を寄せる。
「やらしいこと言うなって…」
「なんで?これからヤラシイことすんのに。そうそうオッサンから伝言。明日の稽古は昼からしか来らんないって、言っといてやるってさ」


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