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[Novel:03] -P:06-


 と、やっと身体を起こした宏之に、軽く振って見せたのは、薄い色のついたローション。あんぐりと情けなく口を開けていると、なんだか妙にうきうき楽しそうな晃が、穿いていたジーンズを脱ぎ捨てて戻ってくる。
 色の薄い茂みの中で、確かに頭を持ち上げているもの。晃の腰へと伸ばした宏之の手は、やんわり押し戻された。
 嫌な予感に眉を寄せる。まさかとは思うが。
「何する気だ?」
「ナニ」
「…は?」
「オレがしてやる」
「おい、待てって!」
「じゃあお礼?」
「なんの!?」
「なんでもいいから。ちょっと大人しくしてなさい」
 ときどきこんな風に、晃はまるで自分の方が年上のような物言いをすることがある。それが不思議と似合っていて、なんだか説得力があって。どういうわけか、逆らい辛い。

 ぱくぱくと空気を求める金魚よろしく、言葉が継げないでいる宏之の足の間に座り込んだ晃は、膝を立て上目遣いに宏之を見た。
「今日、ずっとさ。ヒロユキのことばっかり考えてたよ」
 手にボトルを傾ける。とろとろ流れ出したソレを、両手に擦り付けた。ボトルを放り出し、ひたりと内腿に貼りつく手のひら。
 ゆるゆる移動するほっそりした手に、何か言いたげだった宏之は言葉を取り上げられ、視線を引き付けられた。
「いっぱい後悔してさ。ヒロユキが許してくんなかったらどうしようって、思ったら泣きそうでさ」
 張りつめたものに手を添える。開いた手で自ら胸元を弄って、熱い息を吐き出した。宏之の熱の篭った視線が、全てを見ていると思うと、背筋が震えてくるのだ。
「オッサンと喋ってる間も、ヒロユキのことばっかり、考えて…て」
 ぬるぬるした指先を中へ少しだけ入れてみる。一瞬身体が強張って、足の指先がくっと反応するのを隠しておけない。
「ふ、あ……」
 静かに見ていた宏之は、手のすぐそばにあった晃の足を捕らえた。
「や、ヒロユキ」
「聞いてる。それから?」
 ぐいっと足を持ち上げる。バランスを崩した晃は背中をベッドに預け、嫌がるように軽く頭を振った。
「話せよコウ、続き聞きたい」
 足の、親指と人差し指の間。感じることを知っていて、宏之に弄られる。
「んんっ…だから、ぁ…オッサンに、聞いて…ヒロユキ、許してくれる、かなって」
「うん」
 晃は指を増やして、中を広げた。そうやて淫らに自分を綻ばせていく様は、ずっと宏之の視線に晒されている。
「そした、ら…きっと、おこってないって…いわれて…だから…」
 荒くなっていく息も絶え絶えに、言葉を紡いだ。うっすら開いた瞳が捉えたのは、晃を求めて力を取り戻している、宏之のもの。興奮させているのは自分なんだという、陶酔と自信に指を奥まで押し込んで、背中を反り返させる。
「ああっ…や…」
「コウ、入れてもいいか?」
「ダ、メ」
「ダメって…」
 苦笑いを浮かべ、宏之はローションと先走りで濡れているコウの中心を優しく握りこんだ。
「ふ、あぁっ!や、はなして」
「離してやるから、入れていい?」
「それは、ダメっ」
「コウ……」
 聞き分けのない晃に困惑する宏之を、ゆっくり押し倒す。

 身体なんか震えてしまって、行き場のない熱が暴れまわっていたけど。それでも、宏之の身体に手を付いた晃は身体を持ち上げた。
「ちょ、ええ?」
「ん、支えてヒロユキ」
「大丈夫か?」
「うん。な、はやく」
 宏之に手伝ってもらい、もうやわやわと待ちわびているところへ宛がった。
「んっ…ああっ!や、やあっ!」
「っ…コ、ウ!」
 ゆっくり腰を下ろしていく晃は、眉を寄せ身体を支配する快感に流されまいと、抗っている宏之を見ていた。きつく閉じられた目の端がぼうっと染まっていく。自分の身体が、どんどん熱くなっていくのがわかった。
「ふ……っ」
 こみ上げる陶酔感に、最後まで咥えこんだものをきゅうと締めてやる。


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