[Novel:06] -P:03-
いくら、気を失うまで擦り上げられたとしても、あらゆる傷が見る間に完治する身体なのだから、擦れて赤くなるなんて、そんなこと。ありえないのだ。
でも、残念ながら宏之は正確に晃の身体を把握しているわけではない。
こんなにもまじまじソコだけを見つめたこともないし、なにより今は頭に血が昇ってしまっている。
ささやかな変化に、気付くことはなかった。
指で周囲をなぞって、つっと中へ入れ、少しだけ奥を探る。含みきれずに濡れていたところは、身体を震わせた晃に呼応して、こぽっと飲み込んでいたものを吐き出した。
「あ…っあ、やっ…」
恥ずかしくて身を捩る晃を許さず、両脚を抱え上げた宏之は、興味深そうに少しずつ指を差し入れた。流れ出てきたものが、晃の秘部をいっそう塗らしていく。
真っ赤になってきつく目を閉じる晃が、狂いそうなくらい可愛い。
「かわいい…」
正直に言ってみたが、晃はかあっと耳の先まで赤くして、手近なところにあった枕を宏之に投げつけてきた。
「どこ見て言ってんだバカッ!」
当たるわけもなく、ぽすっと見当違いのところに落ちてしまう。手を伸ばして枕を拾った宏之は、まるで当然のような顔をして、晃の腰の下にそれを挟み込んだ。
「ちょ、なにする気だよ?!」
「せっかくだから、ここも調べておこうかと思って」
じっくりと。丹念に。
ふざけるなと暴れたかったのだが、宏之の長い指を深く奥まで入れられたら、もう晃はシーツにしがみついていることしか出来ない。
「やだぁ…ッ!ひろゆきっ!」
「大丈夫大丈夫」
何がだよ!と。
ツッコむことも許されず、少し高く掲げられたそこに、火傷しそうなくらい熱い視線を感じた。
「見…んな、よ…」
「なんで?」
「なんでって、も…やめ…」
耳まで赤くして顔を伏せてしまう晃を気にすることもなく、宏之は中へ入れた指をくるりと回した。
「あっ…!アアッ」
「どこがイイかは、オレも知ってる」
指先に触れる、ひっかかり。そこを弄られると晃の身体からは力が抜けてしまって、あんなに饒舌な口が、ただ甘い悲鳴を上げるだけになってしまう。艶めかしい痴態は、この三年で完全に覚えてしまった。
「ここだけで、イケるよな」
「やっ…やあ…ん!あぁッ!」
「なあ、どんなヤツ?」
晃をこんな、快楽に弱い身体にしてしまったのは?
痛いくらいの視線の正体を嫉妬だと知って、晃は首を振り違うと訴えた。
「なに?」
「ヒロユキ、だけ」
自由なんか利かないだろうに、それでも涙を浮かべて訴えるから。宏之は意地悪な指を止めた。
「なにが」
「こんな長いこと、一緒にいた男は…ヒロユキ、だけだ…」
女は、違うけど。男は宏之だけなんだと。
零れる涙にほんの少し胸を痛めて、宏之が息をつく。
傷つけてしまった苦い後悔と、晃の告白がもたらした甘い誘惑。
指を抜いて、宏之は弾けそうになっている自分の怒張を晃に宛がった。押し付けられた熱に歓喜して、そこは必死に宏之を飲み込もうと蠢いている。
「ごめん。泣かせるつもりはなかったんだ…」
謝って、涙を舐めると潤んだ瞳に睨みつけられた。きゅうっと宏之の頬を引っ張る指先には、力なんか入っていなかったけど。
「変な嫉妬、すんなよな」
「ああ」
「んなこと言ったら、オレだって言うぞ?」
「なにを?」
「今までの女とか、初めてはどんなヤツだったんだとか」
「…それは、勘弁」
だろーよ?と。拗ねた表情はどんなにその運命を説明されても、幼かった。
どんなことにも、泣いて懇願するだけでは済まないのが晃で、そんな晃だからこそ、宏之はこんなにも愛しくて。ぷつりと勃っている胸に吸い付くと、くいっと髪を引っ張られた。
「で?」