【Lluis×TheoA】 P:01


 ラスラリエは周囲を海に囲まれ、大陸からも遠く離れた島国だ。
 この国では一年前まで、魔族とヒトが共に平和を分かち合っていた。魔族とヒトが互いに助け合って暮らす、この世界で唯一の国だ。

 孤島の小国であるにも関わらず、ラスラリエは大陸の列強から完全な独立を守っている。
 理由のひとつは、豊富な地下資源に恵まれ、上質な宝石を数多く産出し、経済的優位に立っていること。
 そして、もうひとつの理由。
 「賢護五石(ケンゴゴセキ)」と呼ばれる鉄壁の守りを有しているために、ラスラリエは軍事力でも大陸の列強各国から、優位な位置に立っている。
 
 
 
 
 
 遠い過去、ラスラリエ王家の始祖はヒトでありながら、当時ひどい迫害を受けていた魔族を護って戦った。まだ大国の領主であった彼に従い、彼の領民たちも志を等しくして、魔族を護ろうと立ち上がった。
 少し特徴的な容姿を持つことや、わずかではあるがヒトとは異なる特殊な能力を持つために、魔族と呼ばれ蔑まれていた者たち。彼らにとって平和に生きることが、ままならなかった時代だ。
 当然、魔族を守ろうとする者は同じように迫害され、住む場所を追われる。それでも領主たちは戦うことをやめなかった。
 魔族と
ヒトの違いは、些細な容姿の違いだけ。彼らの有する魔力など、ほとんどの者は役に立たない程度の力に過ぎない。
 そんな彼らを差別するのは、ヒトの弱さだ。自分を守るために他者を傷つけようとする、弱さ。
 そんなものに惑わされてはいけない。だからこれは、自分たちの正義の為の戦いだ。そう彼らは言い放った。


 しかしどんなに力の限り戦っても、大国の力には敵わず領地を負われた王家の始祖は、自分に従う領民と魔族たちを連れ、大きな島にたどり着く。
 思ってもみなかった豊穣な大地。人々を守っていけると確信した領主は、その島でラスラリエ王国の独立を宣言した。

 魔族とヒトが、同じだけの権利を与えられる理想郷。苦楽を共に生きようとする人々に深く感謝した魔族は、王家とその民に永遠の友愛を誓う。
 中でも他の者とは異なる、ひときわ強い魔力を持っていた特別な魔族たち。五つの部族の五人の長が、王家に永劫の忠誠を捧げた。
 自分たちは何度でも転生し、子々孫々にいたるまで貴方の一族に仕えようと。
 それぞれに特徴的な瞳と髪色をした五人の魔族の忠誠を受け入れ、ラスラリエは新たな道を歩き始めた。
 王国と賢護五石の始まり。
 国民なら子供でも知っている、国史の始まりに記された物語。
 
 
 
 
 
 海賊討伐隊、第三小隊隊長テオ・オーベリは、ゆっくり目を開けた。