容姿を理由に子供扱いされたり、ましてや女のように扱われることは、憎しみを抱くぐらいイヤなのに。相手がウィルだと思うと、それもいいかなんて、納得している自分がいる。
どこまでもどこまでも、自分を甘やかしてくれるから。拗ねてみたり八つ当たりしたり、そうやってレフはずっと、ウィルによりかかってきた。
―――依存しているのは、私の方だったんだな…。
ふっと表情を和らげて、レフはだるい腕を持ち上げる。
「レフ?」
「どこまで焦らす気なんだ、お前は」
「切羽詰ってんのはオレの方だよ」
「どうだかな…いつもいつも余裕で、可愛げのない」
届くまで腕を上げなくたって、ウィルはちゃんと身体を寄せてくれる。広い背中を抱けることが、こんなに嬉しいのだ。
「…もう、諦めた」
「どういう意味?」
「意地を張るのはやめにする。お前相手に、めんどくさい」
「なにその雑な扱い」
「うるさいな。いい加減、早く寄越せ」
「レフ」
「お前は血の一滴まで私のものなんだから。とっとと突っ込んで、善がり狂わせて、私の中に出せ」
あからさまな言葉に、さすがのウィルもびっくりしたのだろう。唖然とした表情を見て、レフはしてやったりと笑う。
敵わないな、とウィルも苦笑いを浮かべた。
宛がわれていたものが、レフを押し開いて中を侵食する。自分のものではない体温が、さんざん解されたそこを灼いていく。
「ひ、あっ!あああっつ!」
悲鳴のような声をあげ、レフが仰け反った。それでも抱きしめたウィルの背中を、離そうとはしない。
「っ…!レ、フ」
ずっと余裕を見せていたウィルが、苦しげに眉を寄せて動きを止めた。
少しずつ、少しずつ。繋がりが深くなる。その度にレフは、ウィルがそばにいることを実感していた。
痛みを伴なう感覚が、確かにウィルという存在を、レフの中に刻み付けていくのだ。
無意識にきゅうきゅう締め付けると、ウィルの逞しさが増していく。自分がウィルを悦ばせているとわかるたびに、レフは乱れて嬌声を上げた。
「やっあ!ん、ああっ…あ、あっ!」
「レフ…レフ」
ウィルという存在で埋め尽くされ、ぐちゅぐちゅと中を擦り上げられて、レフは襲い掛かる快楽に耐え切れず、大きく髪を揺らせた。指を絡めて握り合った手を押さえつけ、ウィルもたまらないという表情で眉を寄せている。
情熱的に突き上げられるたびに、いやらしく擦れ合う濡れた音が、二人だけの部屋に響いていた。
「ああ、んっ…あっ、あ…っ、ふ…ああっ」
「くっ…ぁ」
「んんっ!うぃ、る…ウィル!」
まだ早いと焦る気持ちを凌駕する悦楽に、ウィルは己を解き放つ。熱いものを中へ叩きつけられ、ほとんど同時にレフのものも爆ぜた。
「っ、は…はっ‥はあっ」
折り重なり、互いに洗い息を吐くことしか出来ない。
しばらくしてから、ようやく息を整える。あまり体重をかけるのが可哀相で、なんとかウィルは身体を起こした。
「…レフ?」
ぐにゃりと脱力している華奢な身体。顔を上げたウィルは、大きすぎる快楽に気を失っているレフを見つけ、頬を綻ばせた。
ずっと愛し続けた人が、自分だけに見せる表情。だらしなく開いている唇に、優しく口付ける。
「…愛してるよ、レフ…ずっとそばにいるから」
そう囁いて微笑んだウィルは、人生で一番幸せなこのとき、胸の奥で死んでもいいとさえ思っていた。
《ツヅク》