もうそれだけで、長い時間の中に留まっているといっても過言じゃない。
なのに、どうだろう?
あんな若造一人に名前を呼ばれたくらいで、築いていたはずのものは、あっさり瓦解してしまう。
今のうちにここを出る方が、いいだろうか。しかしこの封鎖された小さな町で、どこまで逃げられる?
窓辺で思案する惺の元へ、泰成が駆け込んできた。
「?…どうした」
「せ、い…!秀彬がっ」
「なんだ?落ち着いて喋りなさい」
「秀彬がいないんだ!昼前に出て言ってから、まだ戻っていないと…惺の服を調達しに行くと出て行ったまま、行方がわからない!」
蒼白の泰成が訴える。
膝を折って動揺する泰成を抱きとめてやったまま、惺は嫌な予感に眉を寄せた。
<<ツヅク>>