「そうだ。そもそも最初に会った場所というのはどこだ?どうせ貴方には、狙われる動機を聞いても、わからないんだろ」
他人にも自分にも興味を持とうとしない惺なのだから。
泰成と出会ったあの夜。何度も銃弾を撃ち込まれていた惺が、自分を襲撃した男の意図に、興味を持っていたとは思えない。
しかし犯人の動機を知ることは、秀彬を救う為にも不可欠だ。
「確かに僕も、執拗に狙われる理由はわからないな…お前と会ったあの日、僕が襲われたのは三度目だった」
「…三度目って…回避しようとは思わなかったのか?」
「めんどくさい」
「言うと思った」
相変わらずの問答に息を吐く泰成から離れ、惺は秀彬の書き込みがある地図を持ってくると、それを広げてある一箇所を指差した。
「殺人鬼の指定場所は、ここだ」
「ここって…五番目の犯行現場か?」
「ああ。そうなるな」
「もしかして殺害現場を見たとか」
「見てない…と、思うが」
「…向こうは見たと思っているかもしれないな」
「そのようだ」
惺を呼び出した場所に、秀彬を連れてきているとは考えにくい。やはり泰成は、しばらくここで待っているしかなさそうだ。
悔しそうに地図を睨んでいる姿を見て、惺は少し身をかがめると、泰成の唇を柔らかく塞いだ。
「っ…惺?」
「行ってくる」
「あ…ああ。その、な」
「なんだ?」
「…気をつけて、くれ」
人を気遣う言葉さえ言い慣れない。
戸惑う表情の泰成が年相応に見えて、惺は優しく笑うと気軽に手を振り、部屋を後にした。
≪ツヅク≫