「美沙さんの話、聞けたし。タケルにもちゃんと、思ってること正直に言えたし…ここへ来て良かったと思ってる」
大事な時間をもらえたから、後悔っていうのとは違う気がする。……でも。
「アキのことが…わからないんだ…」
言葉にすると、本当に泣きたくなった。
だって、こんなに苦しいとは思わなかったんだ。
進路のこと、タケルのこと。秘密ばかりが今のオレたちに降り積もっていく。
「強くなりたいよ…」
タケルの手に懐きながら呟く唇は、許されたばかりの泣き言を次から次へと吐き出してしまう。
もっとオレが強かったら、アキは話してくれるんだろうか?将来のこと、相談してもらえたのかな。
魂が繋がってるんだって思ってた。だから何でもわかるんだって、甘えてた。
世界にたった一人、オレと一緒に生まれてくれた双子。
オレが泣きたいとき、いつも代わりに泣いてくれた。オレが辛いときには、オレより先に気付いてくれた。
アキがわからないなんて、思ったことないのに。
悔しくて噛み締める唇を、タケルの指がたどる。なんだろ、すごいあったかくて、気持ちいい。
「…わからないことは、聞くしかないと思う」
「タケル…」
「答えてもらえないなら、待つしかないんじゃないか?」
「話してもらえるまで?」
「そう」
「…話して、くれるかな…」
待ってればいいのか?待ってたらちゃんと、アキは話してくれるんだろうか。不安がるオレに、タケルが頷いてくれる。
「もう少し待っててあげたら」
「…うん」
ゆっくり身体を起こして、ずっとオレを慰めてくれてたタケルの手を握る。
オレはタケルのこと、まだ何も知らないけど。
「タケル…だったらそれまで、お前がそばにいて?」
小さく囁くオレの言葉に、タケルは驚いたみたいだ。
こんなこと、言っちゃいけない?でももう少し。アキがオレの存在を思い出してくれるまで。
その時まででいいから、そばにいて。
タケルはぎゅうって、手を握り返してくれる。
「ここに、いる」
「…うん」
顔を覗きこまれて、急にかあっと血が上るのを感じた。
なんかオレ、すげえ恥ずかしいこと言った?
慌てて手を離そうとするけど、今度はタケルの方が離してくんなくて。
「泣いてもいいんだけどな」
笑いながら言われ、オレはむっと拗ねた顔になった。
「誰が泣くか。ふざけんな」
「泣きそうだったくせに」
「うっさい。泣かねーよ」
「じゃあ…泣きたくなったら。俺を呼べよな」
頬が熱くなる。
でも、自分が喜んでるのもわかる。
オレは息を吐いて、ゆっくり微笑んだ。
「…だったら、連絡先教えろ」
肩を竦めたタケルが名残惜しそうに手を離し、携帯を取り出した。ああ、それ。オレが前に使ってた機種だ。
そんな小さなことが、妙に嬉しくて。オレも自分の携帯を探した。
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≪ツヅク≫