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【蓮×千歳①】 P:11


 十年経っても変わらない、一方通行の想い。自分の気持ちに何一つ気付いていなかった頃には、もう戻れない。

 どう言っていいのかわからず、千歳の瞳の端に涙が浮かんでくる。
 見られたくなくて下を向いた千歳の頭の上から、他の者とは違う、やけにはっきりした声が聞こえた。

『おや、キミとは確か、前にも会ったことがあるね』
「え?」

 間違いなく自分へ向けられた、日本語。
 とっさ顔を上げ、振り返る。

『ああやっぱり。なんだったかな…そうチトセ。チトセだろう?』

 振り返ったことを、心底後悔した。

 千歳の視界に男が現れる。
 息が詰まるような、圧倒的な存在感。
 彫りの深い焼けた肌に、穏やかな瞳があって。男は優しく微笑んだまま、逆さまに千歳を見ていた。

『久しぶりだね、チトセ』
「ひっ…!」

 ふわふわ、ふわふわ。
 宙に浮いた男が、くるりと半回転。
 真正面から見つめられ、意識を手放した千歳は、蓮の腕の中に崩れ落ちていた。
 
 
《ツヅク》