【蓮×千歳J】 P:12


「どこに惚れてるかは、また順に教えてやるから。今は俺だけ見てろ」
「…うん」

 蓮の背中に腕を回し、大好きな顔をうっとり見つめる。うるさいくらい心臓の音が聞こえて、緊張しているのもわかるのに、千歳の心は穏やかだ。
 落ちてくる柔らかな唇を受け止めた千歳が、息を吐き出したとき、蓮はゆっくり身体を進めた。

「ひ、あッ!ああっ」

 止まっていた涙が溢れ出す。痛みと苦しさで、千歳は思わず蓮の背中に爪を立る。でもそれくらいの痛みで、蓮が止まるはずはない。

「…千歳」
「あ、やだっ!れん、いたいっ!」
「悪いな…明日は会社まで送ってやるよ」

 千歳の身体を労わりながら、蓮は繋がりを深くしていく。
 初めて他人を受け入れた千歳の身体は、気持ちに反して蓮を拒絶するけど。十年も待たされたのだ。蓮はけして焦らない。
 食いしばる口に指を入れて、呼吸を助けてやる。痛みにすっかり萎えてしまった前を、容赦なく擦り上げる。何度も名前を呼んで、必死な表情の千歳を見つめていた。

「千歳…千歳」
「ああっ、あ…やぁっ…」
「…千歳」

 いくらでも待っていてやる。
 お前が俺のそばにいるなら。

 首を振って嫌がり、痛みを訴えて泣きじゃくる千歳の肩を撫でて、蓮は目を細めている。締め付けてくる中は狭く、快楽には程遠い。でも、ただ見つめることしか許されなかった過去に比べたら、苦しげな千歳を見ていることさえ幸せなのだから。

「れん…れんっ」
「千歳、どうした?」
「あ、ああ、れん…こわ、い」
「俺がいるだろ」

 熱っぽい声で囁かれて、千歳はようやく目を開けた。
 涙で濡れた視界に、蓮が揺れている。

「でも、怖い…ど、したら…いいの」
「そうだな…俺にしがみついて、背中でも引っ掻いてろ」
「そんな…痛いよ」
「構わないさ。全部任せるんだろ?」
「…うん」
「愛してるよ千歳。必ず気持ち良くしてやるから、俺を信じろ」

 口付けを落とされて、千歳は言われたとおり蓮の背中に手を回した。耳元で名前を呼ばれると、少しは落ち悔いてきたのか、背筋がぞくぞくする。

「声…」
「ん?」
「蓮の声、好き…」
「わかった。じゃあずっと、お前を呼び続けるから」

 何でもしてやる。微笑んだ蓮に、千歳もようやく笑みを浮かべる。ほっと息を吐いた瞬間、蓮が深く千歳を抉った。

「あああっ!」

 千歳の背中がきゅうっとしなる。痛みしか感じなかったところに、小さな熱が生まれた。
 快楽に喘いでいるのか、悲鳴を上げているのか、自分でもわからない。
 繰り返される抽送に、痛みと快楽が混ざり合う頃、千歳は意識を手離していた。


《ツヅク》