ここが南国荘。レンの家。
門から続く道の向こうに建物が見える。あれかな?
首をかしげて覗きこみながら、ゆっくり歩き出したボクは、その建物の前に三人の男たちを見つけて立ち止まった。
こっちに背を向けている、ほっそりしたうしろ姿の二人。彼らと話しているのは、待ちに待ったレンだ。
「レン!」
声を上げて駆け寄る。何かの荷物を手にしているレンは、ボクを見つけるとわずかに目を見開いた。お花屋さんのおかげで、レンを驚かせる計画は成功したみたいだ。
「お前…一人で来たのか?よくたどり着けたな」
レンと話していた二人もボクを振り返ってる。でももう、ボクの目にはレンの姿しか映らない。
ずっと家の中にいたのかな。この寒空の下で何も羽織っていないレンは、体のラインがきれいに出ている白いシャツにデニム姿。やっぱりジンと会っていた時よりくだけた格好で、今のほうがずっと魅力的だ。
「連絡すれば迎えに行ったのに」
「ボクを待っててくれたの?レン」
「当たり前だろ」
ふっと表情が柔らかくなる。
もう本当に、たまらなくて。
足元に鞄を置いたボクは、思いっきりレンを抱きしめ、頬に口付けた。
「おい、咲良」
「会いたカッタ…トテモ会いたカッタんだ、レン」
「日本では挨拶代わりにハグしたりするなって、陣さんに言われてただろうが」
「コレはアイサツじゃないヨ」
「…なに?」
「キミをアイシテルから。だから、触れタイんだ」
「待て、おい、咲良?」
表情が強張ってる。驚かせた?ごめんねレン。でも時間には限りがある。
ボクが今回、この南国荘にいられるのは、たった一週間。もちろんすぐに戻ってくるつもりだけど、一分でも一秒でも、無駄にしたくない。
「キミが欲しい。他のダレでも代わりにはナラナイ」
「…あのな」
「アイシテル」
レンの身体を引き寄せ、耳元に囁く。キスしてもいいかな?って思っていたボクの気持ちを察したのか、片手でボクの顔を遮ったレンは、そのまま力強くボクを引き離してしまった。
やっぱりジンと同じ、カメラマンだけのことはある。腕の強さはさすがのもの。仕方なく離れたボクを、レンは不機嫌そうに睨んでいた。
「血迷うな。俺は男だ」
「ワカッテル」
「お前…」
じっとレンを見つめ、笑みを浮かべる。まだジンにも話してないんだけど、レンには伝えておかなきゃいけない。
「でもボクはゲイだから。何も問題ナイヨ」
はっきり宣言したボクの顔、レンは意外なほど驚いた顔で見つめていた。
そんなにおかしなこと、言ったかな?
気になって後ろの二人を振り返る。
彼らはどちらも青ざめ、まるで固まってしまったかのように、身動きせずボクを見ていた。
《ツヅク》