良かった。びっくりしただけなら、そのうち慣れるよね。今日から一緒の家で暮らすのに、アオキに嫌われるのは悲しいよ。
「なあ、もうこの話はいいじゃん。何を言ったって事実は変わらないんだし。それにさ、どうせみんな今からお酒、飲むんでしょ?」
さっさと始めたら?って。一番年下だと言っていたトラオミが、息苦しかったその場の空気を変えてくれる。
みんながほっとしたの、すぐわかったよ。だってボクもほっとしたんだ。
「そうね。お料理も全部、揃ったみたいだし。蓮ちゃん、ワイン出してきて」
「さっくんいるんだから、日本酒の方が良くない?焼酎とか」
「…榕子さん…いつもワイン…」
「そっか。じゃあ蓮さん、ワインと日本酒と焼酎。よろしくお願い」
「…俺は今、座ったとこなんだぞ」
「僕が出してくるよ」
慌てて立ち上がろうとするチトセを、溜息を吐くレンが止めて、代わりに立ち上がる。
「いい、お前は座ってろ」
「でも蓮」
「場所がわからないだろ」
いいから座ってろって。もう一度チトセを止めたレンが、再びキッチンへ去っていく。
アオキは苦しげに下を向いて、手を握り締めていた。何かを言ってあげたかったけど、それより先にトラオミが席を立ったんだ。
「オレらも何か飲もうよ。二宮さんもまだ未成年だって言ってたよね」
「虎臣くん…」
「色々あるから、一緒に選んで?」
こっちだよって、アオキを誘いトラオミもキッチンへ歩いていく。
よほど逃げ出したかったのかな。素早く立ち上がったアオキが、少年の後ろ姿を追いかけて行った。
《ツヅク》