「咲良さん、これ知ってる?」
「知らない…アメユ?何?」
「説明は難しいな…飲めばわかるよ。あんまり売ってるの見ないけど、理子(リコ)が好きなんだ。買ってみる?」
「イイネ」
「甘いから、お茶も一緒に買っとくね」
トラオミはその、温かいアメユという缶を二本と、ペットボトルのお茶を二本買っていた。
アオキのところへ戻りながら、渡されたアメユを飲んでみる。ほんとだ、甘い。でも甘すぎなくて、なんだか優しい味。
「お待たせ、二宮さん」
トラオミは迷いもなく、アメユの方をアオキに差し出した。渡された缶を見て、アオキは少し驚いた表情になる。
「懐かしい…」
「あったまるよ。嫌いじゃないよね」
「うん…どうしてわかったの?」
「なんとなく好きそうかなって、思ったんだ。当たり?」
悪戯っぽく笑ったトラオミを見つめ、アオキは嬉しそうに頬を綻ばせた。
アメユを一口飲んで「美味しい」と呟いたアオキ。そんなアオキを嬉しそうに見つめているトラオミ。二人を眺め、ボクは思わず溜息を吐く。
どうして二人とも、気付かないのかな。
気付けばきっと、楽しいのに。
早くアオキが気付くといいね。トラオミのくれる幸せを、もっと素直に受け取れるようになればいい。そうすればアオキは、もっと笑えるようになるはずだから。
南国荘に笑顔が増えるのは嬉しいよ。
……ちょっと残念な気持ちもあるけどね。
《ツヅク》