【南国荘U-J】 P:14


「あ…い、や…いやだ」
「蒼紀?」
「いやっ…離して!ぼくに触るなっ!」
「っ!…蒼紀っ」

 初めて抵抗した。
 思い切り振り上げたぼくの手は、兄さんの頬に当たった。
 隣の部屋に虎臣くんがいるのに。そんな場所でこんなこと、耐えられない!ぼくに触らないで!

「何のつもりだ!」
「やっ…あ!いやっ、やだっ」
「お前、いい加減にしろよ!!」

 思いっきり頬を殴られる。でも抵抗をやめず、逃げ出そうとしたぼくを捕えて、兄さんは腹の辺りに拳を叩き込んだ。

「っ…く、ぁ」

 痛みで身体が折り曲がった。苦しくて咳き込むぼくを、兄さんはやすやすとベッドに引きずり上げて、押さえ込む。
 ぼろぼろ涙が零れた。
 イヤだ……離して。
 知られたくない。ぼくがこんなに汚れていること、虎臣くんにだけは知られたくない。
 あんなに優しくしてくれたのに。彼がくれた優しさを、こんな形で裏切りたくない!
 だけど、どんなに抵抗しても。ぼくの力では、自分を守ることさえ出来なかった。

「甘えるなよ、蒼紀。いつまでも許してもらえると思うな」
「ふ、っぅ…や…ぁ」
「声を出すなと、何度言わせる。黙って俺の言うとおりにしていればいいんだ」

 兄さんの舌が身体を這い回る。かつて嫌悪しながらも、快楽を感じていた行為に、今は吐き気さえこみ上げる。
 ろくに慣らしてくれることもせず、無理に後ろを貫かれた。兄さんのものがぼくを突き刺して、中をかき回してる。

「っ…ひっ…ん、ぅ…っ」
「どうせお前だって、俺が欲しいんだろ。それともこれぐらいじゃ足りないか?帰ったら思う存分、やってやるよ」

 痛くて悔しくてぼくは、首を振り続けた。
 心が引き裂かれる。
 どうしてこの人は、ぼくをこんなに憎むんだろう。ぼくが何をしたと言うのか。
 たった一人、ぼくに手を差し伸べてくれた少年さえ取り上げて。優しくされた時間を穢して。どうしたら許してくれるの?
 ……ぼくはただ、虎臣くんの隣で笑っていたいだけなのに。

「っ…あお、き」

 大きさを増していた兄さんのものが、ぼくの中で弾ける。初めてじゃないのに、身体中を汚されたみたいで、唇を噛みしめた。
 もう、虎臣くんに会えない。
 こんな汚い人間、彼に会わせたくない。
 両手で顔を覆って泣き続けるぼくは、扉を叩く大きな音を聞いて、びくっと身体を竦ませた。

「二宮さん!二宮さんオレだよッ!!ここ開けて二宮さんっ!」

 ぼくを呼ぶ、虎臣くんの声。
 恐ろしくて自分の身体を抱きしめた。
 イヤだ……怖い。
 その時ぼくは、助けてと叫んでしまいそうな自分が、何よりも怖かった。
 
 
《ツヅク》