「アオキは何もデキナイのに、どうしてヒロナリは今も、アオキを抱こうとスルノ?アオキがそう望むカラ?…アオキのオネガイ、聞いてアゲル理由はナニ?」
「それは、だから」
「キミはアオキを、アイシテるんだ」
ヒロナリの顔が青ざめていく。
知らずに犯した自分の罪を、突きつけられているみたいに。
本当に可哀相な人だ。自分の想いを認めないあまり、一番大事な人を傷つけていた。
唇を震わせて混乱しているヒロナリを、静かに見守る。
彼はもしかしたら、愛に飢えた子供時代を送っていたのかもしれない。
ヒロナリに逆らえないアオキのこと、大好きになって。でもそんな自分を認めたくなくて。全部アオキのせいだと思い込んだ。
ぎゅうっと手を握り締めたヒロナリは、無意識なのか首を振ってる。
まだ自分を正当化したいの?恋に溺れた男だなんて認めたくない?
君は可哀想な男だと思ってるよ。
だけど、ボクの大好きなアオキを傷つけた罪は、なくならない。
「ザンネンだけど、アオキはヒロナリのことキライだよ」
「っ…何も知らないくせに、勝手なことを」
「ソウ?カンタンな話。どうしてヒロナリにはわからないのカナ?アオキはナイテ、震えて、イヤがった。チガウ?」
「だったら俺を殴り飛ばしてでも、拒絶すればいいだろ!蒼紀が逃げようとしないから、俺は…!」
「ソレこそアオキが、ヒロナリのことキライな証拠デショ」
「何を…バカな…っ」
「コワイから逆らえナイ。コワイから何も言わナイ。…ヒロナリ、ドウシテ自分が嫌われているかワカラナイ?」
ボクの冷たい視線に晒されて、ヒロナリは唇を噛んでいた。
どこか違うところで君と出会っていたら、ボクはもう少し優しくしてあげられたかもしれない。でもね、許せないんだよ。
目を真っ赤にして泣いていたアオキと、アオキを心配するあまり、傷ついて苦しんだトラオミを見たからね。
「アイを伝えずにセックスするのは、ドンナ理由デモ暴力ダヨ。アオキはきっと、自分がヒロナリにアイされてるなんて思ってナイ。当然ダヨネ?残念なコトにキミは、自分がアオキをアイシてるって、知らなかったんダカラ」
「俺…俺は…」
「傷つけてコワシてしまったものは、もうモドラナイ。キミはアオキを取り戻せナイヨ」
真っ青になって、唇を震わせてる。
肘を突いたヒロナリが、自分の頭を抱え込んだとき。裏庭の方から車の音が聞こえた。
《ツヅク》