落ち着かないと。だってそんなの、ほんとに勘違いかもしれないし。
でも……でももし勘違いじゃなかったら。
どきどきしながら顔を上げる。
虎臣くんがぼくの言葉を待ってる。
「…ぼくは」
「うん」
「ずっと、助けてもらってる…虎臣くんのこと、カッコいいと思ってる、よ」
自覚してしまったら、自分の話す言葉全部が、何か違う意味に思えてくる。
ぼくだけなの?
「さっきも、リビングで…兄さんの前で、虎臣くんが手を握っていてくれたの、嬉しかった」
「ほんと?」
「うん」
「じゃあオレが手を握ってたら、蒼紀は嬉しいんだ?」
言いながら、虎臣くんがぼくの手を握る。
うるさいくらいの鼓動を聞きながら、虎臣くんを見つめる。
瞳が少し茶色いんだね。咲良さんほどじゃないけどでも、優しい甘い色。子供の頃に好きだった飴みたい。
ぼうっとそんなこと考えてたら、唐突に虎臣くんの顔が近づいてきて。
ちゅって、何の前触れもなく口付けられた。
「…え」
「え?…うわっごめん!」
一瞬のうちに虎臣くんの顔が、真っ赤になった。
もしかして、全然何も考えずにしたの?
あたふたと慌てて、虎臣くんともあろうものが、言葉を見つけられないみたい。ぼくの身体から手を離すことさえ、思いつかないんだ。
口元に笑みが浮かんでしまった。
カッコいい虎臣くんのこと、可愛いって。ぼくは初めて思っていた。
《ツヅク》