今まで包まれていた直人の熱い口腔をなくして、冷たい空気に晒されると、惺が腰を浮かせて首を振る。
「やあっ!や、なおと、なおっ」
「ん…ちょっと冷たいけど、我慢して」
「なに…?なに、を」
「目を開けて…見て」
「や…っ」
「いいから、惺。ちゃんと見て」
執拗に見ろと命じられ、惺は仕方なく目を開けた。
中途半端に放り出されたからか、先に待つ快楽を予感するからか。零れる涙を手の甲で拭い、肘を突いて僅かに上半身を持ち上げる。
惺の足の間に座っている直人と、目が合った。にやりと口元を歪める直人は、ハチミツの瓶を手にしていて。
「なに…を」
「せっかく送ってもらったのに、もったいないかな、とは思うんだけどね」
「なおと…やめ…」
「動かないで…零しちゃダメだよ」
「や…っ」
緩く首を振って拒絶する惺を見つめたまま、直人が手を傾ける。
いつの間に落していたのか、僅かな間接照明だけが灯る部屋で、それはきらきらと瓶の淵から落ち、震えている惺のものにゆっくりたどり着いた。
金色の糸が、惺に欲に絡みつく。
ほんの少しの量だったが、冷たくて甘くて、とろとろとしていて。惺が悲鳴を上げるのに十分だった。
「ひ、あああっ!」
仰け反った拍子に、身体を支えていた肘が滑る。ぐらりと傾いだ身体を支えたのは直人の逞しい腕。
「っと、危ないよ惺」
「あっ…あ…なお」
「うん。ごめんね」
「お、まえ…はなせっ」
勢いで放った衝撃に震えが止まらない。それでも惺は、直人の腕から抜け出そうと弱くもがいている。しかし悦楽で脱力している身体がいくら抵抗しても、直人の腕ひとつ解くことは出来ないのだ。
しっかりと惺を抱きとめている直人は、そのまま惺を離さずに、中途半端に脱がせていた下着ごと、下肢に纏わりついていた服を脱がせてしまった。
直人の熱っぽい瞳が笑みに歪んでいるのは、惺が嫌がることを、わかっていてやったから。
「ごめんごめん、悪ふざけが過ぎたよね」
「も…はな、せ…やっ」
「ごめんってば、惺。泣かないで」
ぼろぼろと零れ落ちる涙を舐め取りながら、直人は惺の放ったものと、ぬるくなったハチミツを指先で混ぜ合わせ、それを惺の後ろに挿し入れた。解すように中を探りながら、ゆっくり惺を膝立ちにさせて、そのままやんわり背中を押していく。
「あ…あっ、あ」
「だいぶ薄くなってきたね、惺の痣…。こんな風に部屋が暗いと、見えなくなるくらい」
「んんっ…なおと」
床に手をついた惺が、這うような体勢になる。直人の右手が痣に重なると、惺は切なく啼いて背中を反らせた。