「なお…なおと、が」
「俺が?俺がどうしたら幸せになる?」
「…そばに、ずっと…なおっ」
ぎゅうっと抱きつく惺の肩を掴んだ、力強い手。肩に顔を埋めていた惺を見つめている直人の、怖いくらい真剣な顔。
涙を落し続ける惺の頬を包んだ直人は、唇を触れ合わせて囁いた。
「いるよ、そばに」
「あ…あ」
「惺が永い眠りにつくとき、最期に見るのは、俺の顔だからね」
重ねた誓いのキスには、欲情のかけらもなくて。でも惺の生涯で一番甘く、とろけるほど切ない極上の、金色の味。
直人を見つめたまま頷いて、惺はくったりと身体を預ける。こんなにも直人が欲しいと思ったのは初めてだ。
誓いのキスが神聖だった分、反動で身体が渇いてしまって……我慢も限界だった。
「直人…」
「ん?」
「…欲しい、直人」
スーツの上からそこを撫で上げられ、驚いた直人は思わず惺の顔を覗きこんだ。
「ちょ…え?ここで?!」
「ん、すぐ欲しい」
「待ってよ惺、さすがにここは」
平日で人気のない場所とはいえ、ここは空港の駐車場。いつ隣に車が入ってくるかわからないのに。
さすがに躊躇いの表情を浮かべた直人を見て、惺が拗ねた顔になる。
「ここでいい」
「でもさ…ねえ、とりあえず帰ろうよ」
「嫌だ」
「そんな、イヤって言われても…」
「誰に見られてもいい。身体の奥までお前で満たされたい」
「っ…だったらせめて、近くのホテルとかなんとか」
「待てない」
「あの、惺さん、ちょっと」
「うるさい」
言うや否や、惺は直人の上でジャケットを脱ぎ、下に着ていたニットも脱いで、誰もいない助手席に放り出してしまう。そのまま続けてシャツのボタンに手を掛けると、直人が慌てて惺の手を止めた。
「わかった、わかったからっ!じゃあせめて、窓にスモーク貼ってる、後ろの席に移ってよ。それくらいなら待てるだろ」
「………」
「俺が人に見られたくないのっ!惺の肌を誰かが見るなんて、絶対にイヤだからね」
これだけは譲れない、と強く言う直人を見つめ、渋々頷いた惺は、直人の座る運転席のリクライニングを強引に倒してしまった。
「う、わっ」
「仕方ないな」
「それは俺のセリフだってば」
もそもそと直人の身体を越えて、惺は後部座席に移動する。溜め息を吐いた直人が手を伸ばし、後ろに置いてあった自分の鞄とコートを前へ移した。