繋がっているところから生まれる熱は、次第に二人の身体と思考を、溶け合わせていく。どこまでが自分で、どこまでが相手の身体なのか、わからないくらい。
狭くて動きの制限される車内では、単純な律動を繰り返すしかなくて。だからこそ余計に、浅ましいくらいの欲を引きずり出されてしまう。
密閉された音のない世界に、惺の嬌声と直人の息遣い。あとは濡れたものが擦れ合うような、ぐちゅぐちゅといやらしい音。
直人は惺の頭を引き寄せ、唇を塞いだまま強引に身体を入れ替えた。シートに押し付けられた惺は、嫌がって身を捩っているが、そうして拘束され息苦しさに喘ぐ方が彼を悦ばせると、知っている。
「んんっ!んーっ」
きゅうっと惺の身体が強張った途端、直人は拘束を解いて重なる肌を引き離した。
「あ…え?なお、や…や、ぁっ」
「やらしーカッコ」
狭いシートに服を脱ぎ捨て、両足を上げて直人を咥え込んでいる惺。熱い息の零れ落ちる身体が、汗にしっとり濡れて、ほんのり染まっているのは、薄暗い車内でも見てわかる。
直人はこれ見よがしに、天井の真ん中についている車内灯をつけた。
「っふ…あ、あ」
「こんなとこで裸になって。ぐちゃぐちゃだね、惺。誰かに覗き込まれたら見えちゃうよ?」
「ああっ…や、だ」
嫌だと首を振るくせに、直人を咥えこんだところが切なく締め付けている。にっと唇を吊り上げ、直人は惺の首筋から臍の辺りまでを、ゆっくりと痣のある右手で辿った。
「いつものメガネかけた、冷たい印象の惺しか知らない人が見たら、驚くだろうね。まあ、誰にも見せないけど」
「やっ…なお、なおとっ」
「どうしたの?そんな顔して。俺はいつだってそばにいるだろ。勝手に飛んでっちゃうのは、惺の方じゃん」
繋がっている部分を直人の指が弄る。惺は車のシートに爪を立てて、唇を噛んだ。
「誰もいない部屋を見て、俺がどんなに心配したか、惺にはわからないよね」
「なお…」
「イカせて欲しいって、言ってみてよ。そしたら全部許してあげるから」
「や…やめ」
「ひとつくらい、俺のワガママきいてくれたっていいじゃん。…気持ちよくイカせて欲しいって、俺のじゃないとイケないって言って」
黙っていなくなったことも泰成ばかり頼っていることも、全部許してあげるから。