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不恰好なおにぎりを見つめたまま、しどろもどろに言い訳を考える。惺は俺と皿を交互に見て、ため息をついた。
「お前が作ったのか?」
「うん…上手に出来なくて、ごめん」
「そうだな。まあ、美味そうには見えないな」
手厳しい評価に俺が肩を落としていると、惺は何も言わずにラップをはがして、一つ手に取ってくれた。
驚く俺の前で、惺はそれにかじり付く。
「惺?」
「なんだ?食べるために作ったんだろう?…食べてしまえば同じだしな」
苦笑いの惺に、ほっとした。嬉しい。惺のために一つでも出来ることがあるなら、それ以上の喜びはない。
「それにしてもお前、ずっとここにいたのか」
「うん。邪魔しちゃ悪いと思って」
「コレだけ置いておけばいいものを。…まったく、お前はいつまでたっても要領の悪い子だね」
言いながら、ちらりと部屋の中へ目をやった惺は、ため息をついて俺の手からトレイを取り上げた。手持ち無沙汰になった俺の手を、惺が繋いでくれる。
「せ、惺…っ」
「何時だと思ってるんだ。子供はさっさと寝なさい」
そのまま俺の手を引いて、惺はてくてく歩き出した。すぐそこの、俺の部屋まで。
歩くついでにダイニングテーブルへトレイを置いて、俺の部屋のドアを開ける。素直に中へ入った俺を引きとめ、惺はぎゅっと抱きしめてくれた。
……これはただのハグで、挨拶みたいなもんだって、わかってるけど。心臓に悪いよ惺…どきどきする。
「明日はいつも通りでいいんだな?」
「うん…」
「じゃあ、ゆっくり休みなさい。おやすみ直人」
すっかり惺の身長を越えてしまった俺の頭を、撫でてくれる。じっと待ってた俺を見て、幼い頃一人では寝られなかったことを思い出してくれたんだろうか?
「おやすみなさい…惺」
呟く俺の頬を軽く撫で、惺はドアを閉めた。
ぎゅうと締め付けてくる胸を押さえて、しゃがみ込む。
……寝られないよ、惺。
切なさと嬉しさで泣きそうだ。俺はしばらくそうして、惺と俺を繋いでくれた星型の痣で胸を押さえていた。
というような第一話。