「…こっち?」
「ふ、っ…やめ…っ」
「こっちの方が、気持ちいい?」
首を振る惺の頭の上に押さえてた両手を一纏めにして、破れたシャツを使って拘束したけど。惺の細い手首をきつく縛ることなんか出来ないんだ。甘いよね、俺。でも今の惺には十分でしょ?これだけでも、動けないよね。
そのまましばらく惺を見つめてた。
怒りなのか、快楽なのか。惺の頬が少し紅潮してる。
「気持ちいいんだよね?」
囁きながら、右手で惺の頬を撫で、首筋を撫でた。
右の胸を舌先で弄りながら、痣を押し付けるように左胸に触れ、そうっと撫で下ろしていく。
腰の辺りへ右手がたどり着いたとき、俺はようやく、惺を抱き寄せるようにして痣に触れたんだ。
「ここの星…ずっと触りたかった」
俺が言うと、惺は目を見開いて、何か恐ろしいものでも見るみたいに俺を見てた。
知らないと、思ってた?
俺と同じ星形の痣が惺にあること、まだ知られていないつもりでいたの?惺は俺のことなんか、なんでもわかってると思ってたのに。
全然知らないんだ?俺に興味なかった?
「知ってたよ…」
「な、お」
「俺と同じ形の痣。惺にもあるの、ずっと前から知ってた」
口元に笑いが浮かんでしまう。怯えた惺の視線が気持ちいい。
痣のある腰を撫で上げた俺は、一度身体を起こして惺を見つめた。
逃げ出そうともがく身体から服を剥ぎ取っていく。
何もまとわない、肌理の細かい惺の身体が現れたら、もう理性なんか欠けらも残らなかった。
ふわりと染まった惺の身体。
均整が取れてて、すごく綺麗。
「きれいだね…惺」
うっとり呟いて、また惺の身体に触れていく。震えてるのが俺のせいだってわかてるのに、それがいっそう俺を、どきどきさせるんだ。
細い身体をうつ伏せにさせて、改めて惺の腰にある痣を見つめた。
描いたみたいに、きれいな星型。
俺と同じカタチの痣。
右手にある自分の痣と、惺の痣を重ねてみる。その瞬間、惺はびくっと震えて、動かなくなった。
「…そんなにこの痣、嫌い?」
聞いても、答えは返ってこない。
痣が嫌いだから、俺も嫌い?
それとも俺が嫌いだから、痣のことには触れて欲しくないの?
思考に引っかかった何かを押しやるように頭を振って、俺は惺の痣に唇を寄せた。途端に惺は身じろいで。
宥めるように震えてる身体を撫で、惺の痣を執拗に舐める。俺はそのまま、指先を滑らせた。
「っ…ん、ぁ」
苦しそうな惺の声に、少しだけ甘いものが混ざったような気がした。ぴちゃぴちゃと痣を舐めながら、惺の身体を探り、背中を撫でる。
指先に当たるこつこつした背骨が、変にいやらしくて、触るの気持ちいい。
「や…っ、なお、とっ」
呼ばれた自分の名前に、惺の顔が見たくなって。俺は痣からようやく離れ、惺の隣に身体を横たえて、震えてる愛しい人を抱き寄せた。
好きだよ、惺。
大好き。
潤んだ瞳で俺を見てる惺は、苦しそうに眉を寄せてる。
もっと睨まれるかと思ってたけど、惺はまるで泣きそうな顔をしてた。
いつも厳しい表情の惺と向き合ってるだけに、憎しみを込めて睨まれるよりもこっちの方が辛いな。
でも俺には、もうやめようなんてこと、思い浮かびもしないんだ。
俺が惺の首の下に手を入れて、顎を捕まえたまま唇を重ねても、惺は口を開いてくれない。ちゅって吸ってみたけど、噛み付いてくることも、唇を開いてくれることもなくて。
「惺、口開けて…」
囁いた俺は、頑なな惺の態度に少し息を吐いて、今度は覆うように唇を重ねたまま、惺の弱い左胸を摘み上げる。
「っ!ん…ふっ、ぁ」
途端に薄く開いた唇。俺はそのまま、深く舌を差し入れた。
……誰かと深く唇を重ねることが、こんなに気持ちいいと思わなかった。
俺は口腔の中を舐めまわして、怯えている舌を絡め取る。
嫌、なんだろうな。
応えてくれることは、ないけど。それでも気持ち良くて、眩暈がしそうだ。
抱きしめてた身体をゆっくり辿り、僅かに固くなってるものを握りこんだ。
「身体…楽にしてて」
俺の言葉と身体を辿る手に、惺は急に身体を固くして、首を振ったけど。もう一度惺の顔を自分のほうへ向けさせて、唇を重ねた。
こんな風に、誰かのを触ったことなんかない。でも惺のならいっそ、ずっとこうして握っていたいとさえ思ってしまう。
だって触ってるだけでも、自分まで身体が熱くなるんだ。
「ん、んんっ…ふ、やめっ…んん!」
ゆるゆると上下に撫でてたら、惺の身体は少しずつ力が抜けてくようだ。
ねえ、惺。気持ちいい?
拘束されたままの惺の手が、悔しそうにまくらを掴んでる。
俺は固くなってる惺のものから手を離し、身体を起こした。中途半端にされて、惺は動けないみたいだ。