「惺…こっち、感じて」
「あっ…あっ…や、んっ…あ」
「うん。大丈夫…力抜いて?ちゃんと待ってるから…」
囁いてると、惺の身体はゆっくり力が抜けていって、俺を締め付ける力も、動けないほどじゃなくなってく。
薄く開いた口から漏れる声が、少しずつ甘くなってきた。
「惺…いい?」
「あ、あっ…なお、と…あっ」
「いい?動くよ?」
惺の様子を見ながら、ゆっくり身体を引いて、少しずつ深くする。もう一度身体を引いたとき、俺は惺の後ろがきゅうって、名残惜しそうに締めてくるのを感じた。
「あ、んっ…や、なお…っ」
「惺…」
繋いだ右手をそのままに、惺はぼうっと涙で濡れた瞳に俺を映しながら、肩に縋ってた手を首に回して、ゆっくり引き寄せてくれたんだ。
「…ん、んっ…ぁ」
「うん…動くね」
「なおと…ああっ、や…っ」
無意識だってわかってる。
惺は俺を認識してるかどうかもあやしいって、ちゃんとわかってるんだけど。
その口から聞こえる甘い声は、確かに俺の名前を呼んで、俺を求めてるんだ。
歓喜がぞくって、背中を走った。
……惺を気遣って、緩やかな律動を心がけてたのなんか、最初の何回かだけだ。
その気持ち良さに溺れた俺は、惺の肩を掴んで、思うままに腰を使ってた。
「あっ!…あん、ああっ!や、なおと、ああっ…ひ、あっ」
「んっ…惺、惺っ…」
細い身体を激しく揺さぶって、惺が苦しげに首を振るのも拒絶して。
俺は繋がってる全部で惺を感じたくて、何度も何度も惺の身体を揺すり上げた。
数えられないくらい惺がイッて、もう出来ないって泣きながら訴える。
でも俺は、絞り取ろうとでもするみたいに惺のものを擦り上げ、自分も惺の中へ出してた。
繋がってるところがぐちゃぐちゃに濡れてる。ちょっと動くだけでも、音がする。
唇を貪って、嫌がる舌を吸い上げて。
たまらなかった。
惺の声が、シーツを掻く足が、俺を止めようとして縋る指が、全てが俺を狂わせて、止めさせてくれなかった。
「せい、っせ、い!」
「あ、あ…!なおと…や、ぁ」
おかしくなりそうなくらい惺の名前を呼んで、自分勝手に快楽に溺れて。
ふいに俺が正気に返ったのは、惺が声を上げなくなったから。
「…っせ、い…?どうした、の…」
気を失ったんだってわかったとき、惺の頬にぽたぽた何かが落ちてきた。
なんだろう?って。
そう思った俺は、惺の頬を撫でてみた。ぼんやり見つめる手のひらは濡れてて、そこに刻まれてる、真っ黒な星。
初めてだ。
この痣が、禍々しいって思ったの。
痛む胸が辛くて身体を起こしたとき、ようやく俺は、自分が泣いてるってことに気づいたんだ。