放っておけないというなら、なんで今になって突き放そうとしたの?
惺を苦しめるのは嫌だけどでも、だったら俺がもっと大人になって、一人で生きていけるようになるまで、そばにいてくれても良かったんじゃ……
未練がましく考える俺の気持ちを見透かしたように、じいサマは苛立たしげな様子で立ち上がった。
そのまま窓辺にたったじいサマから、俺は背を向けられてしまう。
「惺は人を探している」
静かなじいサマの声。
さっきまでの激昂が、嘘のように。
「……人?」
聞き返す俺は、自分の指先が震え始めているのを知ってた。
「そうだ。もうずっと長い間、自分が結ばれるべき人を、探しておるんだよ」
振り返ったじいサマは、冷たい表情で俺を見て、嘲笑うように口元を吊り上げていた。
「結ばれる、べき…」
呆然と呟く。
……じいサマの声を遠ざけようとでもするように、俺の中に自分の声が響いてた。
惺が好きだって。
惺を好きなのは俺だっていう。
行き場のない悲鳴。
「わしの方でも探してやっているが、なかなか上手くはいかんようだ」
「じいサマ…じいサマ、俺」
「惺のためにも、相手がお前のように浅ましく、愚かなではないことを、祈ってやりたいものだ」
俺はじいサマの言葉を最後まで聞かず、走り出してた。真っ白になった頭を落ち着かせることも出来ずに。