【君が待っているからB】 P:06


 放っておけないというなら、なんで今になって突き放そうとしたの?
 惺を苦しめるのは嫌だけどでも、だったら俺がもっと大人になって、一人で生きていけるようになるまで、そばにいてくれても良かったんじゃ……
 未練がましく考える俺の気持ちを見透かしたように、じいサマは苛立たしげな様子で立ち上がった。
 そのまま窓辺にたったじいサマから、俺は背を向けられてしまう。
「惺は人を探している」
 静かなじいサマの声。
 さっきまでの激昂が、嘘のように。
「……人?」
 聞き返す俺は、自分の指先が震え始めているのを知ってた。
「そうだ。もうずっと長い間、自分が結ばれるべき人を、探しておるんだよ」
 振り返ったじいサマは、冷たい表情で俺を見て、嘲笑うように口元を吊り上げていた。
「結ばれる、べき…」
 呆然と呟く。
 ……じいサマの声を遠ざけようとでもするように、俺の中に自分の声が響いてた。
 惺が好きだって。
 惺を好きなのは俺だっていう。
 行き場のない悲鳴。
「わしの方でも探してやっているが、なかなか上手くはいかんようだ」
「じいサマ…じいサマ、俺」
「惺のためにも、相手がお前のように浅ましく、愚かなではないことを、祈ってやりたいものだ」
 俺はじいサマの言葉を最後まで聞かず、走り出してた。真っ白になった頭を落ち着かせることも出来ずに。