俺の手から名残惜しそうに唇を離し、物足りなさを補おうとするみたいに俺に口付けて、そのまま握ってた右手を、自分の痣に導いていく。
「ん…っ、あ…なお、と」
痣の上についた傷は、ちょとっだけ盛り上がってて。その凹凸で痣を撫でられるのに、惺は弱い。一度だけ言われたんだよ。この傷が無かったら、俺たちはこうしていないだろうって。
惺の甘い喘ぎを聞かされ続けてる俺はもう、耐えらんなくて。惺の手を振り切り、痣の辺りを引き寄せた。
「惺…入れたいよ」
「んっ…あ、あ」
惺が舐めてくれて濡れた指を、惺の後ろへゆっくり沈める。
もうほんと、限界。早く入れたくて、痛いくらい。
性急に中を探って、惺の弱いところを強く擦った。
「あっ、ああっ…ん!なお、と」
「惺…限界だってば」
キスするのも、惺の綺麗な顔見てるのも嬉しいけど、今はもうそんなこと考えられない。必死に訴える俺を見下ろして、惺は微笑んだ。
「…いい子だ」
「惺…」
そっと手を押され、俺は促されるままに指を抜いた。
惺が自分でゆっくり腰を落としていく。熱くて狭いところに、ぎゅうぎゅう締めつけられてしまう。
「っ!…せい」
「ああっ!や…ぁ、あっ」
惺の目から涙が零れた。
最後まで入れたらもう、俺はじっとしてられる限界で。細い背中を抱いたまま身体を浮かせ、惺をベッドへ押し倒した。
「あっあ、んっ!な、お…っ」
「も、無理。動きたい」
ごめん、惺。ごめんね。
もう耐えらんない。
そしたら惺が、俺を見つめて髪を撫でてくれた。それはなんだか、いいよって言ってくれてるみたいで。
「惺っ」
「ひ、あっ!あああっ」
惺の足を抱え上げた俺は、ぎりぎりまで自分を引き抜いて、深いところまで一気に突き上げた。
「あ、んっ!ああっ」
「せい…せ、い」
何度も惺の身体を揺さぶってると、自然と惺の腰が揺れて、中が絡み付いてくる。かあっと頭の奥が熱くなって、俺は欲を満たすことしか考えられなくなっていた。
背中に回された惺の手が、縋るみたいに強く俺を引き寄せるんだ。爪を立てられると、痛みにぞくぞくしてきてしまう。
「ぅ、ぁあ…あっ、あっ」
突き上げるたびに漏れる、惺の甘い声。
余裕がなくて、惺の弱いところばっかり攻めてると、細い背中がしなやかに反り返って、咥え込んでる俺を締め付けた。
「っ…!せいっ」
苦しくて眉を寄せたまま、惺の肩を引き寄せる。
「あ、あ…っ!」
一番深いところで熱いものが爆ぜたら、惺もびくんって大きく身体を震わせて。俺の手の中に、吐き出していた。
力が抜けたように、緊張でしなっていた惺の身体が、柔らかくベッドに沈んだけど。でも目を閉じたまま、惺は何かを嫌がるように、ゆるゆると首を振るんだ。
「な、お…」
「…うん」
荒い息をつく惺が、何度も唇を舐めている。誘われるままに口付けると、濡れてぼんやりしてる瞳が、俺を見つけてくれた。
「なお、と」
「抜いた方がいい?」
突っ走っちゃったから、辛いかな?って思ったんだけど。
「や…っま、だ」
もう一度首を振った惺は、俺の頭を抱きしめて、髪をかき回すみたいに撫でまわしてくれる。
それから……きゅって。
いきなり中を締めたんだ。
「っ!…せ、せいっ」
イッた直後にそんなことされたら、ヤバいんだけどっっ?!
焦って上体を起した俺のこと、惺は意地悪く下から見上げて、笑っていた。
……もうね、本気で思うよ。
惺には全然、敵わないって……。
散々煽られたせいで、いつも以上に惺の身体に溺れた俺は、結局そのまま二回イッてしまって。ぜいぜい言いながら重なるように倒れこんだんだけど。
しばらく経って髪を撫でてくれる惺に言われたんだ。
「調子に乗ってるからだよ」
って……。
乗ってません。
乗ってませんけど、反省します。
ぐったりしてしまう俺は、惺にそっと右手を握られて顔を上げた。
満足そうに微笑んでいる、綺麗な顔。
子供の頃からずっと変わらずに、俺のことを見ていてくれる。
厳しい視線で、睨むように。意地悪く笑って、からかうように。それから、とろとろに蕩けて、甘えるみたいに。
「ねえ…惺」
汗で張り付いた惺の前髪をかき上げた。
「なんだ?」
「…ずっと考えてたことがあるんだけど、聞いてもいい?」
俺が言うと、惺は首をかしげた。
そういう仕草は、可愛いんだけどな。でもそんなこと言ったら、きっと怒られるから、言わないけど。
繋がったままの俺たちは、ごろんと横になって。互いを見つめる。
俺はそっと惺の痣を撫でた。
「ん?…どうした」
「あのさ…痣が消えるまで、千夜って聞いたんだけど」
「ああ」
「一晩に二回しても、カウントは一回?」
「……は?」