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首筋の月に照らされている、艶やかな華。朔の背筋がぞくりと震えてしまう。
「悦んでんのは、俺だけじゃねえだろ」
いやらしく歪む口元。節の大きい器用そうな指が、朔のうしろに差し入れられた。
「ひ、んっ…あぁ!」
「どうした。欲しいんだろうが」
「いや…いやあっ!」
中で指を曲げ、爪を立てられて朔は身を捩った。肩を押さえる右腕。艶やかな桜に目を奪われる。
自分の視線が勝手に圭吾の首筋に吸い寄せられていくのに気付いて、朔はぎゅうっと目を閉じた。
涙が零れて、どうしようもない。
朔の足を大きく開いた圭吾が、指を引き抜いたところへ己を宛がい、一気に朔を貫いた。
「ひ、あああっ!」
引きつるような痛みに、背中が反りあがってしまう。
「っ!…相変わらず、狭えな。こんなとこに俺のを咥え込んでんのかと思うと、毎度毎度呆れるぜ。どんなけ淫乱な身体なんだ」
何度も首を振るのは、何に対してだろう。わからなくても必死に首を振って、いつまでも何かに抗っている。ごつごつとした岩の上で暴れる朔の身体を、圭吾が抱き起こした。より深く咥え込まされ、朔は思わず目の前の圭吾に抱きついて、震えながら身体を強張らせる。
「どうした、腰振れよ」
「いや…っいやああっ」
「何が嫌なんだか。こんなおっ勃てといて、嫌もねえだろ。…なあ朔、腰振ってねだれよ。あんた俺に犯されたくて、いつまでもここにいんだろう?」
酷い言葉を投げつける圭吾は、震えて泣くばかりの朔に溜息をつくと、細い身体を自分から引き離し、後ろへ片手をついた。両手を握り合わせ、怯えるように圭吾を見ている朔。頬に流れる涙を圭吾の指が掬う。思わず朔が息を吐いた瞬間、圭吾は腰を浮かせて中を突き上げた。
「っ!やあああっっ!!」
唐突な突き上げによろめいた朔は、必死に圭吾の身体へ手を伸ばした。何度も下から突き上げられ、何も考えられなくなって、朔はただ首を振る。縋りつく手が、無意識に圭吾の首筋をたどっていた。
それはどこか甘えるような仕草にも思えて、少しだけ圭吾は頬を緩めたが、勿論朔は気付かない。朔の長い髪に指を通し、頭を引き寄せた圭吾が、快楽に喘ぐ赤い唇を舐め、舌を差し入れてくると、息苦しいはずなのに朔は自分から圭吾の舌に吸い付いていた。
堪えようもなく、腰が揺れてしまう。身体はいつまでも慣れないのに、心や記憶に刻み付けられた快楽が、朔を惑わせるのだ。ぞくぞく震えるのは、誰の手管を思い出しているのか。こうして膝の上に朔を抱え上げて契った、最初の男は誰だったろう。
思い出すことは出来なくても、刺激を受けて震えた記憶だけは刻みついている。朔は絶頂を求め、咥え込んだ圭吾のものを、己の快楽が渦巻く場所へ擦り付けた。
「あ、んっ!ああっ、あんっ!」
「そうやって、腰振ってな。可愛がってやるからよ」
嘲る圭吾の言葉は、朔に届かない。
背中を抱いてもくれない圭吾に縋ることしか出来なくて、朔の心はいつまでも悲鳴を上げる。
割り切ってしまいたかった。自分はきっと、夢を見ていただけなのだ。
長い時間の中で、救われるその日を思い描き、たった一人を探していた。何も手がかりなどなく、どんな保証もないのに。朔は自分を解放してくれる相手に、僅かな理想と夢を抱いてしまったのだ。
兄が手離した彼女は、母親のような優しさと、少女のような愛らしさで、いつも自分達を迎えてくれていたから。朔は自分が出会うのも、あんな風に心の中まで美しい女性なのだと、勝手に信じていた。
いや、本当は。男でも、女でも良かった。ただ心が添い合い、優しく手を取り合える人であれば、それで良かったのだ。
自分の長い時間を終わらせてくれる人。気が遠くなるほど広い世界にいる、たった一人。きっとその人は、兄といるよりも弟といるよりも強い気持ちで、そばにいたいと思わせてくれる人なのだと。
……それがこんな、けだもののような男だったなんて。
脆く崩れた理想を、いまだに追おうとする自分が許せず、心が泣き叫ぶ。
切り刻まれても死なない朔にとって、こんな監禁など意味がない。いつでも出て行けるのにそうしないのは、圭吾から離れてまた何百年もさ迷うのが、怖いからだ。
圭吾は、道具。
朔を開放するための道具。だから、割り切ってしまえばいい。毎夜この身体を抱かれるのは、ただ必要な儀式。それだけ。それ以上を求める方が、どうかしている。