「はっ!関係ねえさ。桜太にしたって、行きてえとこがあるなら、どこへでも行きゃあいいし、やりてえことがあるなら、何でもすりゃあいいんだ。俺はあいつを縛るつもりなんかねえぜ」
「けど…幼い子供には、大人の手が必要でしょう?縛ることと、見守ることは違うと思います」
朔の言葉に圭吾は少し驚いた顔をして、そうしてぎりっと歯を噛みしめた。ひくりと肩を震わせた朔の前で、圭吾はゆっくり目を閉じる。
瞼を上げたときは、もう別人だった。
朔を見上げる。……じっと、鋭い瞳で。
「…そうだな」
「…………」
「桜太を縛るつもりはねえ。俺が縛りつけんのは、あんただけだ」
「何を……」
「あんただけは、二度と離してやらねえ」
「どう、して…?」
そんなに、朔のことだけ?
桜太のことならあんなにも優しい顔をするのに、いま朔を見ている目は冷たいくらいに暗くて、まるで別人だ。
「どうしてだろうな?」
「なぜなんです…どうして私だけ…」
「なんだ?あんたも桜太のように扱って欲しいのか?」
「違います!」
かっと赤くなった朔は、自分の甘えを見透かされたような気になって、咄嗟に湯から出ようとした。しかしそれを許さず、圭吾は細い身体を自分の方へ引き寄せる。
背中を抑えられてしまって、逃げられない朔の後ろに、無遠慮な指が挿し入れられた。
「やっ…あ!」
「まだ柔らけえな。…あんたと桜太は、違うだろ」
「そんなこと、わかってます…離してくださいっ」
「…あんたを縛る理由なんか、意地でも教えてやらねえよ」
「いや、いっ…ああ!やぁっ」
圭吾の指に誘われて、熱い湯が朔の中へ入り込む。内側から膨れ上がる熱に、朔は身体を震え上がらせた。
「いや、いやぁっ…!ああっ…ね、がい…も、ゆるし、て」
「どうせあんたには、言ったってわからねえさ」
きっぱりと言い捨てた圭吾は、朔の中へ己のものを突き入れた。すでに猛っているもので中をいっぱいにされた朔は、圭吾の肩に爪を立てて悲鳴を上げる。
「ひっ!あああっ!!」
「煩ぇ口だな!ちったあ黙ってろ!!」
苛立たしそうに叫び、朔の頭を引き寄せた圭吾は、力ずくで口を塞いだ。重なった唇の中に、朔の悲鳴は残らず吸い取られてしまう。
「んんっ!んーっっ!!」
髪を掴まれている朔には、圭吾を振りほどくことが出来ない。息も絶え絶えに、圭吾の暴力的な腕の中で追いつめられた。
ちゃぷちゃぷと湯が波を立てるたび、朔の中を出入りする圭吾の太いものが、身体の中へ湯を送り込んでくる。血が沸騰しそうなほど身体が熱くて、でも何より朔の中を擦る圭吾のものが熱くて、気が遠くなりそうだ。
朔はぼろぼろと涙を零していた。
こんな風に、暴力だけで抱かれるのが久し振りなのだと、その時になってやっと気付いた。
酷いことを言いながら、朔の望みなんか一つも叶えてくれなくても、でもここのところの圭吾は丁寧に朔の身体を抱いていた。ちゃんと後ろを解してくれていた。傷などついた端から治ってしまう身体だと知っているくせに、圭吾は手順を踏んでいたのだ。
――いや、だ…!
心が悲鳴を上げる。無自覚に期待していた分、最初の頃より圭吾の所業に傷ついた。
あんなにも柔らかい声を持っているのに。あんなにも優しい目で桜太を見るのに。なのに、朔にだけ。
「あ…ああっ!いや、いやあっ!」
開放された唇から、拒絶の言葉ばかりが落ちていく。間違えるな、と朔を責めるのは朔自身の声だ。
この男に何も期待などするな。
この男のしている残酷な「仕事」を忘れるな。
自分が彼の腕の中にいるのは、ただ許される時を待つためなのだと。
湯から強引に引き上げられ、剥き出しの岩に身体を押し付けられる。足を抱え上げた圭吾が、なりふり構わず腰を動かして、ただ自分の欲求だけを追っている。ずるりと抜かれたものが、目の前に現れた。
「口、開きな」
必死に空気を取り入れていた朔は、その言葉に頑ななくらい口を噤んだ。なのに圭吾は自分の指を朔の口に突っ込んで、無理矢理開かようとしている。
「開けっ」