「泣くんですか?あなたが?」
「ああ」
「…じゃあ、もうどこへも行けませんね」
「そうだよ…俺が年甲斐もなくぎゃあぎゃあ泣き喚いたら、周りがそうとう困るだろうさ」
圭吾の方も笑みを浮かべている。
朔は両手で圭吾の頬を包んで、引き寄せた。
「どこへも行きません…」
「ああ」
「ずっとあなたに、繋がれていたい」
触れ合う唇の中へ落とした告白。圭吾はにっと笑った。
「そうだな」
言うや否や着物の裾を乱暴に開き、朔の両足を掴むと、苦しいぐらい身体を折り曲げてしまう。ひくっと震える朔の身体の間に割り込んで、圭吾は笑みを浮かべたまま顔を伏せた。
「や、ああっ…あ、あ…」
首を振って嫌がっても、すでに大きな自信で支えられてしまっている圭吾は、意に介さない。ぬめる舌が朔の中へ入り込んで、少しずつそこを、濡らしていった。
「あ、あっ…や、けいご…ああっ」
ぴちゃぴちゃ舐められている淫猥な音が、外から聞こえる雨音に混ざっていた。恥ずかしさと快楽に苛まれ、朔は苦しげに自分の髪を掻き乱す。
そのままずるりと舌を抜いた圭吾は、狭いところを押し広げるように指を入れて、丁寧に中を探るのだ。朔は堪らずに手を伸ばし、圭吾の腕を掴むけど。白い指は捕らえられ、押しのけられてしまった。
「や、いや…っ、けい、ご」
「もうお前は、怪我もするし熱も出る身体になったんだ」
「なに、あ、ああっやだ、けいご…やっ」
「しっかり慣らしとかねえと、壊しちまいそうだからな」
だから、と。
圭吾は執拗にそこへ唾液を塗り込め、指を入れて掻き回す。朔は何度も何度も訴えた。
――早く入れて、もう許して。
でもそのことごとくに、圭吾は笑って応えようとしない。
初めての身体を抱こうとでもいうような、丁寧で終わりのない愛撫。朔のものはすでに天を向き、透明なものを零しているのに。
「あぅ、んっ…ああ、あ…けいご、も、やめて…やだ、ぁ…」
「朔?」
「いやぁ…ひ、ぅ…やめ、いじわるな、こと…しないで…」
「何言ってんだ?こんな優しい男はいねえだろ」
圭吾の舌がゆるゆると、はちきれそうなものを根元から先まで舐め上げる。そのざらりとした感触に、細い身体は震え上がった。
「ああっ!あああ…っ」
長い愛撫に熱くなっていた身体は耐え切れず、圭吾の口の中で果ててしまった。しかしぐったりと力の抜けきった朔に、ようやく圭吾は自分の物を宛がったのだ。
いつからそうなっていたのか。屹立している圭吾のものは、火傷しそうなくらいになっていて。
「っ…!あ、あ」
「そのまま力、抜いてろよ」
ぐっと押し付けられる圧迫感に、朔は必死で手を伸ばし、圭吾の着物に縋りつく。圭吾は朔の片足を自分の肩に担ぎ上げると、顔を寄せた。
「朔…息、吐けよ?」
「けい、ご…けいご、はやく…」
「ああ。わかった」
「はやく…いれて、なかへ、きて…っ」
もう最後の方は泣き声にまぎれ、声にならない。宛がわれた圭吾のものが、強引に朔を割り開く。
痛みに悲鳴を上げた朔の身体は、今まであんなに何度も抱かれていたというのに、引き攣るように固くなっていて、圭吾の進入を拒絶していた。
全身が抗っている。
痛みよりも、本能が抗うそのことに、朔は泣いて嫌がった。
「ああっ!や、やっ!やああっ!」
「っ!…さ、く」
首を振って、圭吾にしがみついて。
受け入れようとしない自分の身体が、悔しくてしょうがない。
圭吾を受け入れなくて、誰を受け入れるのだ。切なく懇願して身体を繋いでもらったのは、自分なのに。
変わり果てている自分の身体が、朔を苦しめる。
閉じていた目を必死に開けると、そこには苦しげな圭吾の顔。見てしまったらまた涙が溢れてきて、朔は何度も首を振った。
痛みと苦しみに混乱する朔を、なんとか落ち着かせたくて。痛がる姿が可哀相だとは思ったのだが、圭吾はそれでも強引に身体を進め、深く繋がったところで息を吐いた。
朔の身体はまっさらになっていて、過去の経験を全て忘れてしまっている。だからこうして、初めて男に触れられる生娘のように、怯えて固くなっているのだ。
それは圭吾にとって、この上ない幸せなのだけど。今の朔にそれを伝えるのは、難しい。
慣れた心と、怯える身体に苛まれ、板挟みになってしまっている朔は、必死に言い訳をしようとして、泣きながら圭吾を見つめていた。
「や…いや、けいご…わたし、は」
「朔?」
「ちが、やだ…こんなっ」
「落ち着けって、なあ朔…」
ぼろぼろ涙を零し、赤くなっている朔の目元。圭吾はぎゅうぎゅう締め付けてくる中に眉を寄せながらも、朔の顔を捕まえ無理矢理唇を重ねた。
息もさせずに朔の舌を絡めとり、きつく吸い上げる。しがみついていた指は震えて、力なく落ちていった。
「ん、んんっ…」