「では、どうするんだ。このまま放置されたいのか?…私はそれでも構わないよ。お前の部下たちは、お前を見つけてさぞ驚くだろうね。大事な隊長サマが海賊に犯されたなんて知ったら」
嘲りの言葉に耐えて、テオは必死に顔を背けていた。
大きな手がテオの身体をゆるゆる辿り、萎えてしまったそこにたどり着く。リュイスはそれを、口元を歪めて握り込んだ。
「やっ、あ…あっ」
「驚くばかりではないだろう。お前の姿は十分、男を欲情させる。討伐隊の連中にもこの身体を与えてやるといい。やつらは喜んでお前を犯してくれるだろうよ」
仲間を愚弄する言葉に、テオは涙に濡れた瞳で鋭くリュイスを睨みつけた。
かつては王国軍を統べる立場にいたリュイス。その彼が王家の信頼を裏切り、海賊となって、今は自分の古巣を貶めている。
テオには彼の言葉が許しがたかった。
「貴様なんかと一緒にするなっ!」
「お前が男という生き物を知らんだけだ。ほら、お前だってこうされると、たまらないんだろ?」
言いながら、掴んでいたものを上下に擦り上げる。痛みしか感じていないはずなのに、自分のものが熱くなっていくのを知って、テオは首を振った。
「い…やっ、やだあっ」
「楽しんだ方が身のためだぞ、テオ。まあこの傷では、楽しむ気にもならないか」
テオのものを離したリュイスの手が、わき腹の矢傷を塞ぐように、そっとあてられた。
緑色の瞳に、ゆっくりと輝きが溢れていく。魔力が行使されようとする前兆だ。
まだ血の止まっていなかった傷は、しだいにじんわりと温かくなっていった。
「やめろ、リュイス!」
リュイスの意図を悟って、テオは咄嗟に叫んでいた。
そう、あの時も。
仲間の矢に射抜かれ、ちょうど剣を交えていたリュイスの腕に崩れ落ちたときも。
同じことをしようとしたリュイスを、テオは必死に振り払った。
「貴様の施しなど受けないっ!」
「そんなに嫌か?テオ」
「当たり前だっ」
「それはいいことを聞いたな」
リュイスの指先が、ぐっと傷の中に入った。背骨を締め上げるような痛みに、テオは身体を仰け反らせる。
「あああっ!」
「治してやるから、存分に嫌がれ」
傷の深さまで指を突き入れ、ゆっくりと引いていく。リュイスの指先が触れた周囲から、徐々に傷が塞がった。
肌の表面まで傷を塞ぎ、リュイスは手のひらでぐいっと血を拭う。
そうするともう、傷跡さえ見つけられない。
「あ、ああ…あ…」
普通の男なら、気を失ってもおかしくない程の痛み。激痛に震えているテオを、リュイスは満足げに見つめている。