【Lluis×TheoC】 P:03


 もし兵士たちが隊長でありながら敵に捕まったことを憤っているのだとしたら、甘んじて受けるべきだ。
 隊長ではあっても年少者らしく、頭を下げて詫びたテオは、ゆっくり顔を上げて表情を強張らせる。
 副隊長自慢の髭をたくわえた口元に、見たこともないような侮蔑の笑みが浮かんでいた。

「…副長?」
「よくぞまあ、平気な顔で戻られたものですな。貴方はどうやら、まだ我々の隊長でおられるつもりのようだ」
「平気な顔って…それは一体、どういう」

 テオが不在の間に、降格の通達でもあったのだろうか?それはそれでも構わないのだが、しかしいまだ下がらぬ兵士たちの剣の意味がわからない。
 副隊長は首を傾げているテオに一歩近づき、その全身を舐め回すように見ている。不躾な視線は居心地悪く、テオが顔を顰めると、彼は兵士に向かって声を上げた。

「この者を捕らえよ!」
「な…何を言って?!」

 わあっと一気に押し寄せてくる兵士たちに抵抗することもできず、テオは剣を取り上げられ、数人がかりで自由を奪われる。
 押さえつけられたテオは、膝を付いた状態で愕然と副隊長を見上げた。

「どうしたんです!何のつもりで?!」
「言い訳なんぞ聞く耳持たんわ!魔族の犬め!」
「ま、魔族の犬って…!違う、私はっ」
「矢傷はどうされましたかな?軍服をどこに置いてこられたのです?」
「だから、それはっ」
「聞くまでもありませんなあ。緑の賢護石ならあんな傷くらい、いとも簡単に治してくれたでしょう」
「副長!!」

 首を振って話を聞いてくれと叫ぶテオを、見下ろしている副長の後ろから、騒ぎの声が聞こえてくる。テオがそちらに目をやると、見覚えのある何人かの兵士が、自分と同じように拘束されて引きずり出されていた。

「君たちは…」

 呆然とするテオを見つけ、彼らも目を見開いていた。

「オーベリ隊長!」
「隊長、ご無事で!」

 テオの無事を喜んでくれる彼らだが、すぐさま鋭い視線で副隊長を睨みつけた。

「貴様、隊長に何をしている!」
「お前たちも早くその手を離せっ」
「この男はもはや隊長などではない!」

 高々と叫んだ副隊長は、悦にいった表情で剣を抜いた。
 その切っ先をテオの首筋に突きつける。

「貴方はリュイス元帥の秘蔵っ子だ。久しぶりに再会して、可愛がってもらったのかね」

 副隊長の剣先が、ざっくりとテオの服を裂いた。部下だったはずの兵士たちに後ろ手に縛られて、肩を押さえつけられているテオに、逃れるすべはない。
 薄い布が開かれ、さんざん陵辱された痕が晒されると、副隊長はにやりと口元を吊り上げた。