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【Lluis×Theo④】 P:07


 こんな風にリュイスの事ばかり考えていては、疑われても仕方ないだろう。
 でも心を占めるのは、美しいプラチナグリーンの長い髪。

 自分を海賊の仲間に引き入れようとしていたリュイス。テオの身体を押さえつけ、思うままに犯していた残酷な男。
 それでもなおテオは、ここで朽ちるのならその前に、もう一度彼に会いたいとばかり思ってしまう。これでは討伐隊に志願したときと同じではないか。
 自分の情けなさに、泣きたくなる。

 あの指の長い手で身体を撫で上げられ、自分でも知らなかった悦楽を、何度も何度も引きずり出された。痛くて苦しくて、悲鳴を上げ、泣いたのに。
 でもテオは、気付いてしまった。
 身体を走る電流みたいな快楽に負けて、テオが無意識に腰を揺らすと、確かにリュイスは蔑むようなことを言ったけど。でもここで同じ言葉を叩きつけられるたびに感じる嫌悪感を、あの時は感じなかった。
 すごく、辛かったけど。
 羞恥心で死んでしまいそうだったけど。
 でも、何かが違う。リュイスの声で苛められている時、抗うテオの中には何か違うものが存在していた。

 テオは戸惑っている己を自覚する。
 あの深い緑の瞳が、自分を貫いたまま絶頂を迎えて、細くなる瞬間。薄く唇を開いたまま、溜息のような声を漏らすリュイスの姿。
 認めたくなどないが、確かにテオはあの瞬間だけ、言葉では言い表せないほどの満足感を得ていたから。

 こういうのを篭絡された、と言うのだろうか。
 陵辱で教え込まれた快楽に、自分は溺れてしまったのかもしれない。
 だからあの酷い男に、もう一度会いたいなんて。どうせ死ぬならリュイスの傍がいいなんて、情けないことを考えてしまうんだろうか。

 ゆるく首を振る。視線を下げて膝を抱えた。
 行き場のない気持ちをどこへ持って行けばいいのか、テオ自身にもわからない。

 ―――陛下は、すごいな…

 共に捕えられている部下を思い遣る気力さえなくて、テオは思考を占めるリュイスの姿を追いやろうと、同じ状況でも怯まなかったクリスティンに思いを馳せる。

 自分を支えてくれる力だと思っていた者が反旗を翻すのは、こんなにも辛く悲しいものなのだ。
 たかが小隊長の地位じゃない。
 わずか一年足らずの主従関係でもない。
 クリスティンが失ったのは、自分が生まれるよりずっと前から続いていた忠義。自分が死んでもずっと続くはずだった主従関係だ。
 心から信じていた者に裏切られ、父親を弟に殺されたクリスティンは、その数時間後、国民の前に立っていた。
 どうすればあんな風に、強くなれるのだろう。