【Lluis×TheoC】 P:11


 ここで何も考えずにリュイスに向かって走り出すようでは、鉱山の二の舞だ。どんなことをしても、彼ら五人を守らなければならない。

「ちょうどいい。あの男の意図はわかりませんが、この気に乗じましょう。馬に乗れるのは?」
「ヒラ兵士に騎乗の権限はねえが、全員大丈夫だよ」
「わかりました。他の海賊が来ている可能性もあります。三人で王宮へ向かい、事情を説明して援軍の要請を。あとの二人は私と一緒に。とにかくこの基地の保全が最優先です」
「副隊長はどうしますか」
「後回しですよ。あんな小物に、何が出来ます」

 肩を竦めて呟いたテオに、彼らも苦笑いを浮かべた。

「確かにな」
「では私たちは王宮へ」
「俺らはアンタと行くよ」
「…すっかりアンタですね」
「おっと、失礼しました隊長殿」
「やめてください。アンタの方が親しみがあって、嬉しいです」

 にこりと微笑んだテオは「行きましょう!」と叫んで一番先に駆け出した。
 テオの逃亡を知って切りかかってくる兵士たちを交わしながら、リュイスに近づいていく。

「リュイス!」

 テオの声に気付いたのか、彼はこちらを向いて。にやりと口元を吊り上げた。

「無事だったようだな、テオ」
「貴様、こんなところで何をしている!」
「ペンダントだよ」
「はあ?!」
「お前が持って行ったペンダント、取り返しに来た。持ってるか!」

 あんまりな理由を聞いて驚くテオは、思わず呆然と立ち尽くす。その身をめがけて振り下ろされた剣。弾き飛ばしたのは、すぐ傍まで駆け寄ってきたリュイスだ。

「戦闘中に呆けるな!」
「あ…ああ。悪い」

 思わず謝ってしまったテオは、はっとして周囲を見回した。
 自分と共に駆け出した二人の兵士は、仲間であるはずの第三小隊と戦闘中だ。多勢に無勢のように見えるが、いきなり現れたリュイスとテオ、どちらに攻撃を仕掛ければいいのか判断できず、第三小隊は動きの鈍い。
 たった二人でも戦えているせいで、テオとリュイスは戦闘の輪からぽかりと浮いている。
 会話を聞く者がいないことに息を吐いたテオは、次の瞬間はっとして、リュイスの剣を受けていた。

「気を抜くなと何度言わせる」
「うるさい、話しかけるなっ」
「部下の手前、か?オーベリ隊長」

 にやっと笑ったリュイスは、急に視線を鋭くしてテオを見つめる。

「…無事だったんだろうな?」
「リュイス」
「どうなんだ」
「牢には入れられたけど、別に…まさか、そのために?」

 驚くテオに、リュイスはむっと不機嫌な表情を浮かべた。