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「まさかだろ!ペンダントだよ、ペンダント。持っているのか、いないのか!」
「…僕は持ってない。副長に奪われて、たぶん今もそのまま…」
「ふん、あの髭面か」
深い緑の瞳がすうっと細くなって、兵士たちの後ろに隠れている男を見つけ出す。自分の安全を確保しながら、部下を戦わせようとしている姿を見て、リュイスは不愉快そうに眉を寄せた。
「相変わらずせこい男だな。やる事なす事いちいち癇に障る」
「そんな…だって、貴様の側近だった男じゃないかっ」
「自分の気に入った奴だけで組織された軍なんか、すぐに腐るんだ。覚えとけ」
「リュイス…」
「ああいう奴は手元に置いて、監視するしかない。軍ってのはな、テオ。厳然たる規律の下に統べる者がいなくなれば、すぐにでも暴力を行使するだけの組織に成り下がる。戦う相手は敵だけじゃないんだよ!」
そうテオに語りながら、リュイスは戦う手を止めない。テオも襲い掛かる剣を交わしながら、リュイスの言葉に耳を傾けていた。
規律があって初めて、統制される組織。
上に立つものが管理を放棄すれば、あっという間に崩壊する。ちょうど今の第三小隊のように。
テオは唇を噛みしめ、リュイスを見上げた。
「どうした、ちゃんと拝聴していたか?」
「うるさい!説教するな海賊のくせに!」
「そういえばそうだったな。では海賊らしく、己の目的を果たしに行くか」
楽しそうな笑みを浮かべ、飛び掛ってきた兵士をテオの方に押しやると、リュイスは副隊長の元へ駆け出した。
押し付けられた兵士のみぞおちに剣の柄を叩き込み、テオはリュイスの戦う姿を見つめる。
この期に及んでそんなことを考えるのは、情けないにもほどがあると、思うけど。やっぱりああして戦う姿はきれいだ。
この想いは、消そうとして消えるものではないのかもしれない。
「死にたい奴からかかってこい!死にたくないならとっとと逃げろ!」
声を上げて突き進んでいくリュイス。まるで遊んでいるかのような姿に、テオはようやく気付いた。
―――手加減、してる……
魔力を使おうはとせず、叩き込む剣も急所を外している。当たり所が悪くて昏倒している者もいるが、もしリュイスが本気になったら屍の山が築かれているだろう。
テオはぎゅっと剣を握り締め、リュイスに背を向けると、自分に襲い掛かろうとしている第三小隊に目を遣った。
「剣を引けっ!」
強い力の篭った声に、びくっと兵士の動きが止まる。
「仲間同士で争っている場合か!副長の戯言に踊らされるなっ!」
「…オーベリ、隊長…」