国王クリスティンに対する忠誠も、彼を裏切った海賊に対する憎しみも、忘れてなどいないのに。
それらを覆い隠すように、テオの中でリュイスの存在ばかりが大きくなっていく。
戦うリュイスの華麗な姿。
剣を握る大きな手に、憧れて憧れて。必死に後ろ姿を追いかけて。
しかしテオの憧れは裏切られ、そして王宮に置き去りにされたのだ。
あんなに悲しかったのに。
身を切られるより辛かったのに。
今はもう、それすらも思い出せない。
身体を撫でる手が熱い。
リュイスの口の中、胸の突起を舌先でくりくり弄られるのがたまらない。
テオが無意識にリュイスの肩を掴み、突き放すことも出来ずに縋りつくと、満足そうな笑みを浮かべたリュイスが頭を撫でてくれる。
幼い頃、この指の長い手を見るたび、撫でてほしいと切願していた。それはただ、こうして愛されたかっただけなのかもしれない。
もうずっと、幼い頃から。
自分の中に潜んでいた気持ちに気がついて、テオの目に涙が浮かんだ。
「ふ…っく、りゅいす…さま」
「ん?」
「リュイス様…リュイス様」
「ああ」
唇に、肩に、首筋に。リュイスの唇が押し付けられるたび、赤い痕が残るくらい吸われた。
テオの体温がどんどんと上がっていく。
押さえつけられていなくても、テオはもう逃げ出そうとしない。
「ああっ、あっあ」
おとなしくしていろと言われたとおり、リュイスの身体の重みを受け止めて、ただ感じるままに声を上げていた。
自分の濡れた声がまるで甘えてるみたいで、咄嗟に手で口を塞ごうとすると、その手を引き離されて。それだけでテオは抵抗できなくなってしまう。
まるで身体の形を確かめるみたいに、余すところなくリュイスの手がテオをたどっていた。
臍に吸い付かれて恥ずかしげに顔を赤らめたテオは、その手が下肢に至り、ベルトを解こうとした瞬間、びくんと慄いた。
「あ…だめ…やめて、くださいっ」
「テオ」
「そこ、いやっ」
穿いているものを脱がされたら、まだ触れられてもいないのに、そこがすでに固くなっていると知られてしまう。
無理やりされていたとき、テオが快楽に負けるたび浴びせられた、リュイスの酷い言葉が蘇ってきて、テオは辛そうに唇を噛んだ。
「どうした」
「嫌です…やだ…」
またあんなことを言われたら。
ずっと抱えていた気持ちの正体を掴みかけている今、同じように言われたら、もう立ち直れない。
ぎゅっと目を閉じているテオの辛そうな表情に、リュイスは眉を寄せた。