【Lluis×TheoD】 P:11


 さっきまで共有していた熱い、甘い時間を永遠のものに出来たなら、テオは誰よりも幸せになれるのかもしれない。

「貴方とずっと、一緒にいられる?」
「ああ」
「もう僕を置いて行かないって、約束してくれますか?」
「約束するよ」

 かつての意地悪なリュイスからは想像もできないような、真摯な瞳。深い緑を見つめていると、身体が疼いてどきどき胸が高鳴るけど。
 テオはどうしていいかわからず、声を押し殺しながら泣いていた。

「テオ?」
「ふ…っく、ぅ…」
「どうした。どうして泣く?」

 甘い言葉で約束を求めた途端、辛そうに顔を歪めるテオを見て、リュイスは焦った表情を浮かべている。
 戸惑いがちに髪を引っ張るリュイスの指先を、テオは首を振って逃げ出した。

 どうして、なんて。なぜそんな不思議そうに、涙の理由を尋ねるのか。
 強引に自分の身体を開き犯したことも、何人もの部下を打ち倒したことも、事実はなくならない。
 何よりテオが一番許せないことを、この人はしたのだ。

 ―――私のもとに戻って来るんだよ…

 国王クリスティンの囁いてくれた言葉が警鐘を鳴らしていた。

 リュイスのもとへ行き、一緒にいるということは、賢護石でありながら国を裏切った彼の過去を全て許し、その上自分までもクリスティンを裏切ることに他ならない。
 あの戴冠式の日。
 自分と同じように何も知らなかったクリスティンは、たくさんのものを失った。
 友人も、父や弟も。共に国を護ってくれるはずだった要の存在まで。
 弟に父親を殺され、信じていた臣下を手にかけざるをえなかった人。彼はどんな気持ちで、自分の元から逃げ去った反乱者たちを見ていたのだろう。
 斬りつけられた傷は腕よりも、心に痛みを与えたはずだ。

 リュイスが好きだ。
 もう、認めるしかない。テオは誰より、この酷い男が好きなのだろう。
 その気持ちはずっと幼い頃からテオの中にあって、恋心だとは気付かず憧れ続け、ただ必死にリュイスの背中を追った。
 軍人として、家族として。どんな存在でもいいから、ただリュイスのそばにいたくて。
 でもそうして一生懸命に自分を鍛え、テオが手に入れたもの。
 それは今ここで自分を抱きしめていてくれる、リュイスへの想いだけじゃない。
 もうひとつ、けして揺るがないラスラリエ国王クリスティンへの忠誠も、テオが手に入れた大切な気持ちだ。
 リュイスへの想いと、クリスティンに対する忠誠は、テオが自分で育てた大切な心の柱。どちらが欠けても、テオはテオでなくなってしまう。