【Lluis×TheoE】 P:04


「僕も同じことを考えていました」
「そうか」
「はい」
「あれは驚いたな。施設の扉を開けたら、お前が泣きながらうずくまっていて。職員たちに聞いたら、何日も同じ体勢で座っていたのだと言うし」
「驚いたなんて、嘘ばっかり」
「うん?」
「リュイス様、すぐに扉を閉めたじゃありませんか」

 拗ねた顔で訴えるテオの言葉に、リュイスは明るく笑った。

「そうだったそうだった」
「僕ずっと待ってて、やっと来てくれたと思ったのに、すぐに扉を閉められて」
「ああ」
「幻を見たのかと思ってたら、また扉を開けて姿を現して。やっぱり来て下さったんだって思って立ち上がったら、また扉を閉めたじゃないですかっ」

 あの時。幼いテオの前で、リュイスは何度も何度も扉を開け閉めしては、姿を現して消して。いっそうテオを泣かせたのだ。

「懐かしいな」
「反省してないんですか」
「してない」
「リュイス様っ」
「あれはお前が悪いんだ」
「僕が?!」
「そう。お前が可愛い顔で泣きながら、私を待っていたりするから。多少は苛めたくもなるだろ」

 手に持っていた紙の袋を診察台の端に置き、テオの隣に腰掛けたリュイスは、悪びれた風もなく囁きながら、ゆっくりテオを抱き寄せた。

「酷いひと…」
「いまさらだ。よく知ってるじゃないか」
「…そうですけど」
「私はお前を強姦して、基地から攫って、閉じ込めてしまうような男だよ」
「…………」

 その言葉に答えることが出来ず、テオは悲しげに俯いた。
 一緒にいるときだけでも、本当は現実から目を逸らしていたい。事実を並べ立てれば、いま自分のしていることが間違っていると、気付いてしまうから。
 言葉をなくしているテオの前髪を、リュイスは優しくかき上げた。

「でも、好きだろ?」

 間近になった緑の瞳に囁かれて、テオは迷いながら頷いた。俯く顎を掬われ、唇を塞がれる。

「ん…っふ、ぁ」
「待っていたんだろう?私を。今も、逃げられたのに」
「リュイス様…」
「それとも、腹が減りすぎて泣いていたのか?」

 くすっと笑われて、うっとり瞳を潤ませていたテオは、頬を赤くする。

「なんでそうなるんですかっ」
「ははは!ほら」

 押し付けられた紙袋からは、美味しそうな香ばしい匂いがしていた。がさがさと渡された袋を開けてみると、パンに野菜と肉を挟んだようなものが、温かな湯気を立てている。

「これ…」
「レフが作ったものほど旨くはないがね。食べなさい」