でもやっぱり、月明かりにかかげた小さな緑色の石は美しく、少年の心に鮮やかな感動を呼び起こしたから。
―――すごく綺麗な緑色で、リュイス様の瞳のようです。
泥だらけのくせに、やけに自慢げな顔で少年は言い放っていた。
―――リュイス様、お誕生日おめでとうございます。僕はどんな緑の賢護石様よりリュイス様が好きです。
リュイスより前の緑の賢護石など、知るはずもない。たわいない子供の言葉だ。
……それでも。
己を生きることより、賢護石の任を果たすことを求められるリュイスにとって、幼いテオの言葉は、激しく心を揺さぶる価値のあるものだった。
ようやく涙を拭ったのに、テオはまた泣きじゃくっていた。大好きなリュイスにしがみつき、それこそ子供のように。
背中を撫でていたリュイスは、しばらくすると笑いながら「テオ」と呼んで、顔を上げさせる。
「あんまり私の前で泣くな」
「ふ…くっ、リュイス様…」
「お前がそうやって可愛い顔で泣いていると、私はつい苛めたくなるんだよ」
「い…です…っ」
「ん?」
「いいんですっ…貴方になら、何されてもいいっ」
テオはしゃくり上げながらリュイスに訴える。
意地悪なことでも何でもいい。リュイスに与えられることなら、どんなことでも幸せなのだから。
強い力でしがみつくテオの言葉を聞いて、リュイスはニヤリと口元を吊り上げた。
「いいのか?」
「い、んです…っ」
「そうか。なら、次に会うときまで忘れられないくらい、じっくり苛めて帰るか」
言うや否や、リュイスはテオをベッドに押し倒す。
間近になった緑の瞳に、しまったと言いたげなテオの顔が映っていた。
しかし後悔しても、もう遅い。
「あまり大きな声を出すなよ、テオ」
「っ…そんなの、自信ありませんっ」
「そう言わずに頑張れ。私以外にお前の艶めかしい喘ぎ声を聞かせる気なのか?」
にやにや笑うリュイスを見て、赤くなったテオは思わず夜着を掻き合わせた。しかしベッドの上でそんな仕草、男を誘っているようにしか見えないだろう。本人に自覚がなくても。
「あの、リュイス様」
「何されてもいいんだろ?」
「でも僕…最近あんまり食べてなくて、身体が細くなってて…」
「お前は元から細いじゃないか」
「それでもこんな、みすぼらしく痩せ細った身体、貴方に見られたくありませんっ」
「私は見たい」
「っ!…じゃ、じゃあ怪我!そう、僕は怪我人なんですよっ」