【Lluis×TheoG】 P:10


 
 
 
 疲れきって眠っていたテオが、ふっと目を覚ましたとき、寝かされているベッドには、自分以外の誰もいなかった。
 恐る恐る部屋を見回したテオは、窓の傍に立つリュイスの姿を見つける。
 ほっと息を吐いたのもつかの間。
 リュイスの後ろに見える、すでに月影もない空。二人で隠れていた闇は、光をゆっくり注がれて、朝日の訪れを待っていた。
 身体を起こしながら、リュイスを見つめる。何を考えているのだろう。彼は睨むように窓から外を、王宮の庭を見ていた。
 身支度を整えた姿。
 甘い時間は、終わるのだ。

「…リュイス様」

 テオが呼びかけると、リュイスは振り返ってくれて。優しい笑みを浮かべ、枕元まで歩いてくる。

「起きたのか」
「はい」
「身体は?」
「あ…ちょっとだるいけど、平気です」

 ほわりと赤くなったテオの頬に、押し付けるだけのキスをして。リュイスは溜息を吐きながら腰を下ろした。

「もう、行かなければ」
「…はい」

 ついて来い、とは、言わない。
 テオも、もう一緒にいたいとは口にしなかった。

「僕、ここにいてもいいですか?」
「ん?」
「…お見送り、したいんですけど。また泣いちゃいそうだから」
「はは…そりゃマズい。帰れなくなる」

 泣き喚いてリュイスを止められるなら、テオはいくらでも泣くだろう。でもきっとリュイスには、何か信じるものがあるのだと思うから。
 今は離れるしかないのだ。

 ずき、と心が痛くなる。
 それを押しとどめるように、自分の胸に手をあてた。
 必死に耐えようとしているテオを見つめたまま、リュイスは曖昧に笑う。

「なあテオ。お前、海賊討伐隊を辞めて、近衛師団に戻るのか?」
「…わかりません。クリスティン様が望んでくださるなら、戻るかもしれない」

 またクリスティンの名を出せば、リュイスを苛立たせてしまうかもしれないと思ったけど。彼は穏やかな瞳にテオを映したままだった。

「…それもいいかもな」
「え?」
「近衛師団に戻れば、この西館にいる時間も長くなるだろ」
「そう…ですね」
「私が会いに来たとき、すれ違わずに済むじゃないか」

 リュイスの言葉を聞いて、テオは驚きに目を見開いた。

「会いに来て…下さるんですか…?」
「当たり前だろ。私を欲求不満で殺す気か」

 ちゅっと音を立てて唇を吸われ、テオは涙をこらえるように顔を歪めた。
 危険だとか、誰かに見られたらとか、そんなこと考えられないくらい、嬉しい。